本研究は、日中関係史のなかで大きな足跡を残した汪兆銘関係の史料を広く集め、「汪兆銘関係史料」を編集して日本の読者に紹介すると共に、客観的な立場から汪兆銘の人物伝記の完成を目指すものである。 汪兆銘は孫文の継承者と目され、近代日中関係史のなかで重要な役割を果たした。しかし、日中戦争中、日本占領地の南京で政権を樹立したため、戦後「売国奴」「漢奸」と評価され、日中関係史の記載から削除された。しかし、彼の思想と行動を解明することは、近代日中関係史を多面的に捉えることに不可欠な作業である。「汪兆銘関係史料」と汪兆銘の伝記の完成は、日中関係史の不足を補い、日中関係史全体像の構築に貢献するものである。
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