研究課題/領域番号 |
15K02876
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
加納 寛 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (30308712)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロパガンダ / 宣伝活動 / 東南アジア / タイ / 日タイ関係 / 「大東亜」戦争 / ピブーン政権 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、イギリスの国立公文書館や大英図書館における調査により、イギリス側の視点から、戦時下の日本がタイに対して展開した宣伝活動について、タイにおけるドイツやイギリス等の他国の宣伝活動展開全体のなかに位置付けることができた点が大きな進展であった。こうした資料収集の成果は、以前にアメリカにおいて行った調査の結果を「米議会図書館蔵『泰国兵要地誌』(義部隊司令部1945)について」を東南アジア学会『東南アジア:歴史と文化』第42号に発表するなど、他の研究者に向けて史料的価値を説明するように努めている。 アウトプットについても、「「大東亜」戦争期日本はタイに何をアピールしたかったのか:タイ語プロパガンダ誌『カウパアプ・タワンオーク』を中心に」を日本タイ学会『年報タイ研究』第16号に発表し、「大東亜」戦争期に日本がタイ向けに出版していたタイ語プロパガンダ誌『カウパアプ・タワンオーク』の記事分析を通じて、当時の日本が、タイにおいてある程度経済的に余裕のある女性を主な対象として、日本の西洋的な生活や文化・スポーツを中心にアピールしていたことを明らかにし、対西洋宣伝のあり方との差異を考察した。また、「日本の宣伝活動への対応にみるタイ政府の自主・従属・抵抗」を愛知大学国際問題研究所編『対日協力政権とその周辺:自主・協力・抵抗』(あるむ)に発表して、「大東亜」戦争期の日本がタイに向けて展開した宣伝活動に対して、「同盟国」となったタイ政府がどのように反応したかについて、全体的な紹介を行い、当時の日タイ関係を宣伝活動の面から捉えなおした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時に予定していた海外における資料収集活動は校務の都合により1年ずつ遅れているものの、着実に実行して成果もあげられており、おおむね順調に進展しているといえる。 こうした活動によって収集した史料の分析も着実に進んでおり、その成果は学会において積極的に口頭発表をするとともに学会誌等に論文として発表しており、分析とアウトプットの面では計画通りかそれ以上の進展があるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度については、計画当初に予定していて実施できていないオーストラリアにおける資料収集活動を完了させ、所期の成果を着実にあげることが、資料収集面での課題である。 史料分析は、アメリカやイギリスにおいて収集できた史料の分析をさらに進め、より多角的に「大東亜」戦争期の日タイ関係を、宣伝活動の面から進めていくことにしたい。この成果は、7月の日本タイ学会研究大会等において学会発表を実施し、他の研究者とも共有していく予定である。 分野としては、平成28年度に、「大東亜」戦争期の日タイ間の映画戦に関する研究が立研究者によって発表されているが、こうした研究者との情報交換・共有等を学会のパネル等において実施し、より総合的な観点から、立体的に当時の日タイ関係を浮かび上がらせることを目標とし、本研究計画終了時にその成果を著書の形にして公表できるように努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画をしていた海外出張について、初年度に予定していたイギリス出張が2年度目にずれ込んだことにより、2年度目に計画していたオーストラリア出張を実施することが出来ておらず、その出張費分について差異が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、昨年度に予定されていたオーストラリア出張を実施する。
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