今次研究では、多岐にわたる対タイ宣伝活動を分野横断的に分析し、戦時期日本の対タイ宣伝の意図と性格を浮彫にするとともにタイ側の反応をも明らかにしようとした。その結果、日本は対タイ宣伝を非常に重視していたこと、映画・写真宣伝の主対象としては華僑を重視していたこと、冊子宣伝の主対象としてはタイ人女性を重視していたこと、宣伝の内容としては、日本紹介や芸能の活用に重点を置いていたことなどがわかった。これらの宣伝に対するタイ側の反応としては、タイの人々の関心を一定程度集めることに成功したが、タイ政府の対日不信・不満の原因となり、タイ側の国内文化政策高揚を促進することになったことがわかった。
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