研究課題/領域番号 |
15K02879
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
大谷 渡 関西大学, 文学部, 教授 (80340644)
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研究分担者 |
橋寺 知子 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (70257905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本近現代史 / 日台関係史 / 社会生活史 / 文化交流史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦中から戦後70年の激変する時代を生きた台湾の市井の人びとの生涯を、社会文化史的観点から多角的に跡付け、戦後台湾社会の変容との関連において、日本文化の継承と変遷の有り様を具体的に解明することである。今年度8月には、これまでの研究調査の成果をまとめた『台湾の戦後日本――敗戦を越えて生きた人びと』(東方出版刊)を出版した。同書は、日本統治下で日本教育を受け日本人として育ち、戦争を経験した人たちが、その後の激変する台湾社会で紡いだ人生を、口述資料と文字資料、実地調査の照合検討の上で綴ったものである。出版過程において、戦後まもなく中国大陸から台湾に入り、台湾から日本に移動して戦後復興期から高度成長期の日本において宣教を進めた「北欧自由キリスト教宣教団」の宣教師たちと、宣教師に導かれて日本に留学した台湾人の戦後史が浮かび上がった。新たな課題の解明のため、ノルウェー・台湾・日本での口述資料と文字資料の収集と実地調査を行ったことにより、研究は大いに進展し、次年度5月に「シンポジウム Miss.ハーゲンと瀬戸-日本と北欧心の交流65年-」を瀬戸市文化センターで開催する準備を進めた。 初年度10月には、台湾から研究協力者を招いて、「『台湾の戦後日本――敗戦を越えて生きた人びと』出版記念国際シンポジウム」を関西大学において開催した。『台湾の戦後日本』は、出版まもなく日本図書館協会選定図書となり、『読売新聞』2015年9月6日付に「戦後70年 台湾 日本へのまなざし」の見出しで取り上げられた。『毎日新聞』同年10月1日付は、「台湾の戦後日本″描く」の見出しで同書を取り上げ、シンポジウム開催記事とともに大きく報じた。シンポジウム当日は、学外から多数の来場者があり学生の参加も多く、会場は満席となる盛況であった。 次年度も、北欧・台湾・日本での資料収集と実地調査を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始段階において、すでに十分な研究成果の蓄積があり、これをまとめた著書『台湾の戦後日本――敗戦を越えて生きた人びと』(東方出版刊、2015年)を初年度に出版することができたことが、研究進展上大いに役立った。同書の出版過程で浮かび上がった新たな重要課題に関する研究調査、すなわち北欧・台湾・日本における資料収集と実地調査の上において、研究協力者の十分な協力が得られたことも、当初の計画以上に研究が進展している大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
北欧自由キリスト教宣教団と台湾長老教会との関係、及び戦後日本における北欧自由キリスト教宣教団の日本伝道については、これまでにほとんど明らかにされていない研究である。本研究過程で浮かび上がった新たな課題は、本研究の重要な成果を構成するものであり、すでに収集している研究上の情報と合わせて、これまでに築いてきた多くの研究協力者との関係を最大限活用し、北欧・台湾・日本における口述資料・文字資料の収集と実地調査の実施に役立て、研究のさらなる進展を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の前提となった研究課題「戦後日本の社会生活史と台湾―統治下で育った台湾人の日本認識とその変遷の記録化」の研究を1年延長していたことにより、その基金が2015年度に使用することができた。具体的には、「『台湾の戦後日本』出版記念国際シンポジウム開催のための費用に充てることができた。これにより、新たに採択された本研究課題の初年度助成金を有効に使用することができ、これを本研究推進過程に浮かび上がった新たな重要課題に取り組むための費用として、次年度に使用とすることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
戦後台湾を経て日本に入った「北欧自由キリスト教宣教団」の日本宣教に従事した宣教師たちに関する資料収集と、日本宣教及び台湾長老教会との関係に関する聞き取り調査を、ノルウェーとスウェーデンにおいて実施するための費用に充てる。
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