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2016 年度 実施状況報告書

3~4世紀中国長江・湘江流域における地域社会・地方統治の研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K02891
研究機関金沢大学

研究代表者

安部 聡一郎  金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (10345647)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード出土資料
研究実績の概要

本年度は、走馬楼呉簡の形態観察と簡牘出土状況の検討を基礎として、(1)引き続き県―郷間の行政手続きと県内の郷の相対的配置状況の解明を進め、あわせて(2)周辺の地理的環境に検討の対象を広げ、(1)の成果を当時の長沙周辺の具体的な周辺地理環境の中に位置づけることを目標とした。(1)に関する成果としては、郷に下属する居住・納税単位として現れる丘のなかに、複数の郷に属するかたちで記録が検出できるものがあることを手掛かりとして郷の相対位置関係の整理を試みた「長沙走馬樓三國呉簡中所見“郷”與“丘”對應關係的再研究」を国際シンポジウム「紀念走馬楼三国呉簡発現二十周年長沙簡帛研究国際学術研討会」(中国・湖南省長沙市・湖南省招待所、2016年8月28日)にて発表した。本発表に基づく論考は刊行が予定されている当該国際シンポジウムの論集にも投稿している。また(2)に関して予定していた現地調査は、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)を取得し、2016年10月末より半年間の現地滞在研究として実施中である(2017年4月末終了予定)。(2)に関する初歩的な知見については、「2016 年 12 月長沙簡牘博物館実見調査報告」(長沙呉簡研究会2017年2月例会、東京・桜美林大学四谷キャンパス(海外渡航中につきレジュメでの参加)、2017年2月4日)としてまとめを行った中に反映させている。このほか、形態観察と簡牘出土状況の検討を基礎として進めてきた本研究の観点に関連する成果として、「書評と紹介:角谷常子編『東アジア木簡学のために』」(『日本歴史』第820号(2016年9月号)、pp.86-88、2016年)を発表したほか、関連する研究会・国際学会への参加として、長沙呉簡研究会、魏書研究会、第36次韓國中國學會中國學國際學術大會に出席した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

先述の通り、本年度は走馬楼呉簡の形態観察と簡牘出土状況の検討を基礎として、(1)引き続き県―郷間の行政手続きと県内の郷の相対的配置状況の解明を進め、あわせて(2)周辺の地理的環境に検討の対象を広げ、(1)の成果を当時の長沙周辺の具体的な周辺地理環境の中に位置づけることを目標とし、それぞれに成果があった。ただし(1)の研究成果からむしろ明らかとなったのは、今回分析対象とした丘と郷の関係には地理的な関係からは解釈しにくい要素も多く含まれていることであり、戸籍等による人的把握や土地区画と地勢の関係など、他の観点からの分析が必要と考えられることであった。特に(2)の関連では後者の問題がひとつの論点となり得るが、これらの問題点については国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)による現地滞在の中で新たな資料収集等をすすめている。新たな課題は増えているが、歴史地理を踏まえて走馬楼呉簡を理解し、後漢後半から三国・西晋期の長江・湘江流域の地方政治・社会の動静を明らかにするという本研究の目標へは前進しているため、概ね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

最終年度には、必要に応じて長沙簡牘博物館等での短期間の補充調査の実施、および国際シンポジウム・国際学会年会等での発表と論文公表を予定していたが、本研究と深く関わる出土資料が展示される長沙市博物館基本陳列および湖南省博物館の再オープンが2017年度に予定されていること、また長沙簡牘博物館で同年度後半に出土簡牘に関する全国規模の展示が計画されていること、また今年度は研究協力者との予定調整がうまくいかず共同での調査が実施できなかったこと等から、2017年度には再び長沙での1週間程度の調査の実施を計画している。これにより、特に(2)の観点に関わる部分について、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)の成果と併せて研究を推進し、国際シンポジウム並びに論文での成果公表を行う。長沙市・湖南省の博物館の開館状況並びに調査実施に関しては、長沙簡牘博物館を通して確認・調整を行う。国際シンポジウムでの発表については、8月に中国で開催される会議への参加を調整中である。

次年度使用額が生じた理由

今後の研究計画に関して記したとおり、本年度予定していた現地調査は国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)による現地滞在の形に拡大して行われた一方、研究協力者との調整が年度末までにうまくいかず、協力者を伴っての現地調査は実施できなかった。そのため研究協力者の渡航分として確保していた予算がそのまま残る形となった。

次年度使用額の使用計画

今後の研究計画に関して記したとおり、長沙市博物館・湖南省博物館等における関係資料展示が2017年度に予定されているため、本来短期間の補充調査として計画していた海外調査を1週間程度に拡大して実施する。この際、研究協力者も可能な限り同行し、合同調査の形で実施する。昨年度発生した残額は、この海外調査の資金不足分を補うために使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 書評と紹介:角谷常子編『東アジア木簡学のために』2016

    • 著者名/発表者名
      安部聡一郎
    • 雑誌名

      日本歴史

      巻: 820 ページ: 86-88

  • [学会発表] 2016 年 12 月長沙簡牘博物館実見調査報告2017

    • 著者名/発表者名
      安部聡一郎
    • 学会等名
      長沙呉簡研究会
    • 発表場所
      東京・桜美林大学四谷キャンパス(海外渡航中につきレジュメでの参加)
    • 年月日
      2017-02-04 – 2017-02-04
  • [学会発表] 長沙走馬樓三國呉簡中所見“郷”與“丘”對應關係的再研究2016

    • 著者名/発表者名
      安部聡一郎
    • 学会等名
      紀念走馬楼三国呉簡発現二十周年長沙簡帛研究国際学術研討会
    • 発表場所
      中国・湖南省長沙市・湖南省招待所
    • 年月日
      2016-08-27 – 2016-08-28
    • 国際学会
  • [学会発表] 漢魏晉期地方官立祀與西晉國家2016

    • 著者名/発表者名
      安部聡一郎
    • 学会等名
      第36次韓國中國學會中國學國際學術大會
    • 発表場所
      韓国・ソウル市・ソウル大学人文学院
    • 年月日
      2016-08-18 – 2016-08-18
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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