研究課題/領域番号 |
15K02893
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲葉 穣 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (60201935)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アフガニスタン / フロンティア / 旅行記 / 考古学調査 / 貨幣 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、フロンティアとしての歴史的アフガニスタン研究に関連する非年代記資料および考古、貨幣資料の収集調査を進めた。 一方、研究成果公表の一環として、平成27年10月にローザンヌ大学で行われた国際学会 Buddhism and Muslim Encounters in Premodern South Asiaに招待され、On the Muslim Descriptions of Bamiyan Colossiと題する報告を行った。同報告においては、インド世界とイスラム世界のフロンティアとなったアフガニスタン地域において、非イスラム的偶像がどのように認識され、記録されたのかを論じ、関連する討議を行った。 また平成28年1月にはオーストリア科学アカデミー主催の国際ワークショップ Moving Borders: Current Research on Afghanistan between Inner and South Asia に招待され、Central Asia in the mid-eighth centuryと題して報告を行った。ここでは西暦8世紀半ば、ユーラシアの東西が激変を迎える中で、アフガニスタン地域の情勢はどのようであったのか、中国仏教僧の旅行記録を再検討しつつ考察した。これらの発表内容については28年度中に報告論文を提出する予定である。 さらに平成27年12月には國立台湾大学図書館に所蔵されているとの古い報告があったペルシア語地理書写本の調査を実施した。ただ調査の範囲を拡大したにもかかわらず今回、同写本の発見同定にはいたらなかった。方法を再検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の文献資料および考古学調査報告の検討は順調に進んだ。また平成28年3月、大英博物館およびギメ東洋美術館において、アフガニスタン由来の古銭資料、バーミヤーン発掘調査で得られた出土資料の調査を親しく行うことができ、その成果は今後発表される論考等に活かされる。また別項にも記したとおり、研究成果報告および研究討論の機会として二度の国際学会招待を受け、研究の進捗程度と今後の見通しについて大きな手応えを得た。しかし平成27年12月に國立台湾大学図書館で行ったペルシア語写本調査は今回、不首尾に終わった。この写本調査については今後どのような角度から行うべきか再検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き文献資料の精査、考古/貨幣資料の収集と研究を進めるが、前者については特にアラビア語、ペルシア語地理書の後を受けて盛んに著されたいわゆる驚異譚文学におけるフロンティアの扱われ方に焦点をあて、通時的な検討を加えたいと考えている。そのため、従来の資料に加え、近年刊行が進んでいるアラビア語、ペルシア語文学作品の解読に取り組む予定である。また2016年10月にボンで開催される予定の国際学会に招待を受けているので、そこにおいて地理書から驚異譚文学への過渡期の作品についての研究を報告する予定である。
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