研究課題/領域番号 |
15K02896
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
三品 英憲 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (60511300)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 毛沢東 / 中国共産党 / 華北農村 / 土地改革 / 地方党組織 / 基層社会 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、当初の研究計画の通り、1940年代後半における毛沢東を含む中国共産党の中央レベルの指導者と、地方党組織(辺区・解放区等)の指導者たちが、支配地域の農村の階級構造をそれぞれどのように認識していたのか、またそうした認識が土地改革政策の立案と実行にどのような影響を与えたのかを考察した。その研究成果の一部として論文2編(①②)を作成し、また国際的な学術会議において報告(③)をおこなった。なお、①は平成28年6月に刊行される研究書に収録予定であり、②は台湾の国立政治大学の研究機関が編集する学術雑誌に投稿し審査中である。 ①(論文)「近現代中国の国家・社会間関係と民意-毛沢東期を中心に-」(渡辺信一郎・西村成雄編著『中国の国家体制をどうみるか』、汲古書院、2016年6月刊行予定、第7章) ②(論文)「関於1940年代後半中国共産党各級党組織対華北農村社会的認識-土地改革和社会構造-」(中華民国(台湾)国立政治大学国際関係研究中心『中国大陸研究』に投稿・審査中) ③(学会発表)「関於20世紀40年代各級党組織対華北農村社会的認識-通過台湾法務部調査局資料室所蔵資料来考察華北各辺区的認識為中心-」(「“太行山文書与晋冀魯豫抗日根拠地”国際学術検討会議」、2015年7月4日、於:中華人民共和国河北省邯鄲市) また、当該時期の基層社会の住民の言説の収集と分析については、平成28年3月に台湾に赴いて資料状況の調査をおこなったが、主として資料収集をおこなう予定であった法務部調査局資料室では、先方の担当者が交代していたこともあって十分な調査をおこなうことができなかった。しかし、この渡航においては、中央研究院近代史研究所の中国共産党史研究者と研究上の情報交換をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、平成27年度は、(1)-(a)毛沢東・中央レベル指導者の言論の収集と分析、(1)-(b)地方レベルの指導者・基層幹部の言論の収集と分析、(2)基層社会の住民の言論の収集と分析、をおこなう予定であった。このうち、(1)-(a)と(1)-(b)に関しては、それぞれ論文を作成することができた。そのうち、(1)-(a)に関する論文「近現代中国の国家・社会間関係と民意-毛沢東期を中心に-」は、収録される研究書が平成28年6月に刊行される予定である。(1)-(b)に関する論文)「関於1940年代後半中国共産党各級党組織対華北農村社会的認識-土地改革和社会構造-」は、国際的に研究成果を還元することを重視して台湾の学術雑誌に投稿し審査中である。(2)に関する資料は、(1)に関する分析の過程で幾つか収集することができた。以上から、総合的に判断して平成27年度の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、中国共産党各層の認識と政策に関する分析を、国共内戦の末期(1948年~49年)に移すとともに、基層社会の住民の言論の分析を本格化させる。前者の中国共産党各層の認識と政策に関しては、すでにこれまでの研究によってある程度の見通しを持っているが、中華人民共和国の建国初期とその後の社会主義時期の政策の展開を含めて説明できるような歴史像を構築する必要があるため、人民共和国建国後に関する先行研究を整理することを踏まえて、建国前夜の共産党指導層の認識と政策を跡付ける。 後者の、基層社会の住民の言論に対する分析に関しては、資料的な困難は依然として克服できていないが、共産党各層の指導者が作成した文書の中に現れる「農民の姿」や、当該時期の新聞紙上に現れた「農民の声」などを手がかりとして、慎重に考察を進める予定である。
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