本研究は、1940年代後半、中国共産党の中央レベルの指導者が、華北農村社会についてどのように認識していたのか、またそれが土地改革政策にどのように反映され、その結果、どのような構造の支配が成立したのかを考察した。研究の結果、次のことが明らかとなった。すなわち、毛沢東を中心とする中央レベルの指導者は、支配していた華北農村の客観的現実からまったく乖離した認識に基づいて土地分配政策を強行し、社会には大きな混乱と対立が生じた。しかしそのことは共産党の支配の弱体化を招いたのではなく、逆に支配の強化を導き、中華人民共和国において毛沢東・共産党が社会秩序を任意に操作できる基礎をつくった。以上である。
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