研究課題/領域番号 |
15K02902
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森平 雅彦 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (50345245)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東洋史 / 東アジア / 朝鮮史 / モンゴル帝国史 |
研究実績の概要 |
本研究は(1)13~14世紀の事元期(モンゴル服属期)高麗王権の特質を朝鮮国家史の長期的展開のなかに体系的に位置づけ、(2)朝鮮中世国家の特質を「北アジア的」ないし「中央ユーラシア的」要素に注目して浮き彫りにし、究極的にはこれによって(3)朝鮮史の立場から「モンゴル時代」の世界史的意義に対する評価を行うことにある。 以上の研究を、4つの重点課題、即ち①王位継承問題、②君臣関係、③官人集団の統御、④国王近侍集団の分析を通じて行うが、本年度は「③官人集団の統御」を中心に分析作業を進めた。事元期王権は私的武力基盤と人事権の掌握を通じて官人層に対する求心力を高めようとした点を特徴とするが、それは事元期という新たな政治条件下でケシク、巡軍などモンゴル由来の制度・組織の導入を通じて実践された側面がある。しかし一方でこれは、事元期に先だつ武臣政権において特徴的に看取される政治運営方式をモンゴルの外被のもとで王権自ら踏襲したという側面がある。しかもこの動向は、巨視的には高麗の官僚制度が前期以来構造的に生み出してきた膨大な官僚予備軍の存在圧に起因するポスト獲得競争を背景とし、武臣執権および対モンゴル関係にともなう新たな官人輩出層(武人、通訳官、モンゴル式国王親衛隊、外来者など)の登場は、その熾烈化に拍車をかけた。すなわちモンゴルからの影響は、高麗在来の政治潮流との間に期せずして共振現象を起こし、これを増幅させたものと評価することができる。 以上の成果は昨年度刊行した本格通史『世界歴史大系 朝鮮史1』の関連叙述に反映させた。また重点課題①のテーマと合わせて、朝鮮対外関係史研究会において進めている朝鮮対外関係史の特質のモデル化作業に活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にしたがって基本的なリサーチと分析結果の整理に目処を付けることができた。またその成果を戦後最大のボリュームとなる本格的通史の叙述のなかに盛り込み、さらに朝鮮史の意義普遍化をめざす共同研究企画におけるモデリング作業に活かすことができた。ただしこれらに多くの労力を投入させざるを得なかった結果、成果を論文として公表するにはいたらなかったため、計画以上の進展とはしなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度をむかえ、残された重点課題「④国王近侍集団の分析」の分析とともに総括の作業を進める。目処がついた重点課題に関する口頭発表、および論文掲載を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研費にもとづく研究会(朝鮮対外関係史研究会)出席の旅費として使用する予定があったが、その分が所属機関の予算より支出することになったため使用せず、次年度使用額が発生した。 この分は翌年度分の予算とあわせて資料購入費、研究会・資料調査等の出張費に使用する予定である。
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