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2017 年度 実施状況報告書

西夏王国の人名に関する研究―多民族国家における文化交流・融合の視点から―

研究課題

研究課題/領域番号 15K02906
研究機関盛岡大学

研究代表者

佐藤 貴保  盛岡大学, 文学部, 准教授 (40403026)

研究分担者 荒川 慎太郎  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (10361734)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード西夏 / タングート / 人名 / 敦煌 / カラホト / 文化交流 / 多民族
研究実績の概要

平成29年度は、当初の計画では研究成果の取りまとめを行う年度にあたるため、研究成果の発信に重点を置いた。
研究代表者の佐藤と研究分担者の荒川は、これまで中国西北部の石窟寺院―敦煌莫高窟や瓜州楡林窟―で実施してきた調査を通じて収集した、西夏時代の巡礼者や発願者の西夏文字や漢字で記された人名を含む文字資料(多くは巡礼者の落書き)を集成し、平成29年7月に荒川を編者の一人として出版された書籍の中に資料の録文を発表した。本書では、ある人物が漢人風とタングート人風の両方の名前を持っている例があることを指摘した。
佐藤は平成28年度までに実施したロシア科学アカデミー東方文献研究所でのカラホト出土軍籍(西夏軍の兵士の名簿)の実見調査で収集した人名データを基に、軍籍に記されている兵士の人名の命名法について考察を行い、平成30年3月に学術誌に発表した。この論文では漢人がタングート人風、タングート人が漢人風の人名を名乗ることが辺境地帯で浸透していること、そのような命名法は登録されている兵士の年齢から逆算すると12世紀中葉にはすでに行われていたことを明らかにし、軍籍が作成されたカラホトには西夏時代に入ってから漢人とタングート人とが雑居するような形で入植していたことが影響しているのではないかとの可能性を指摘した。また、軍籍に登録されている人名には、漢人風でもタングート人風でもない特徴を有するものが検出されたが、人名の語源・由来を明らかにすることはできず、発表した論文中では、漢人・タングート人がカラホトに入植したと考えられる11世紀よりも以前から居住している他の民族出身の者ではないかとの可能性を指摘するにとどめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

上述の通り、平成29年7月に敦煌莫高窟・瓜州楡林窟でした文字資料集成を発表したが、同年12月に同石窟群を訪問したところ、資料集成で誤って記載しているもの、西夏時代のものとして記載していたものが、文字資料の背景に描かれている人物像の特徴とあわせて改めて検討を加えた結果、別の時代のものであることが判明したり、新たな資料も発見された。このため、資料の再収集と修正・追加すべき箇所を示した資料集を改めて発表する必要があるとの考えに至り、研究期間を平成30年度までの1年間延長することとした。

今後の研究の推進方策

敦煌莫高窟・瓜州楡林窟の資料については、平成30年12月に再度同石窟寺院群を訪問して実見調査を実施し、平成30年度末までに資料集成の改訂版ないしは補遺を発表する。また、中国だけでなくロシアでの資料調査で得られたデータから浮かび上がる西夏王国の文化交流のあり様を、平成30年8月に東京で行われる予定の国際学会や論文等で公表していく。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度に中国で行った石窟寺院の資料調査によって、すでに発表していたデータに誤りがあったり、新たな資料が発見されたため、再調査を実施するための旅費、訂正・補足したデータを基にした研究成果を発信するための出版費用や国際学会で発表する予定の論文の英文校正のための費用として、残る予算を平成30年度に使用することとした。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件)

  • [雑誌論文] カラホト出土軍籍から見た西夏王国国境地帯の状況2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤貴保
    • 雑誌名

      比較文化研究

      巻: 28 ページ: 43-57

  • [雑誌論文] 敦煌石窟西夏期漢文墨書・刻文集成2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤貴保
    • 雑誌名

      敦煌石窟多言語資料集成

      巻: 1 ページ: 335-362

  • [雑誌論文] 敦煌石窟西夏文題記銘文集成2017

    • 著者名/発表者名
      荒川慎太郎
    • 雑誌名

      敦煌石窟多言語資料集成

      巻: 1 ページ: 241-333

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公開日: 2018-12-17  

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