研究課題/領域番号 |
15K02909
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
森 和 成城大学, 民俗学研究所, 研究員 (10367146)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 古代史 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、現在までに発掘報告書が出版され、図版と釈文が全て公表されている「日書」類のうち、放馬灘秦簡「日書」甲乙種の整理分類および解読を中心に行った。当該簡牘は正式な報告書である『天水放馬灘秦簡』(甘粛省文物考古研究所編、2009)の他、赤外線写真に基づいた「天水放馬灘秦簡乙種《日書》分篇釈文(稿)」(晏昌貴著、『簡帛』第5輯所収、2010)や『天水放馬灘秦簡集釈』(孫占宇著、2013)があり、さらに新たに「放馬灘秦墓簡牘」(陳偉主編『秦簡牘合集』〔肆〕所収、2014)が刊行された。このことを踏まえてそれぞれの図版や釈文・注釈を電子データとして入力、対照させながら、当該「日書」に抄録される各種占卜の整理分類を行った。 また、乙種全81篇のうち五音十二律に関係する占卜18篇について分析を行い、相互関係などを考察した。これについては中國古代史研究會(2016年1月15日、於流通経済大学)で「放馬灘秦簡「日書」に見える音律占について」と題し、論文中間報告を行った。なお当該「日書」全体については、日本秦漢史学会大会(2015年11月21日、於早稲田大学)における海老根量介氏の研究報告「放馬灘秦簡と戦国・秦代の「日書」」のコメンテーターを務め、その研究意義や資料の重要性についてコメントした。 さらに、成城大学民俗学研究所のワークショップ(2016年3月5日、於成城大学)で「泰山の聖性」というタイトルで報告をし、古くから聖なる山として尊崇されている泰山の神聖性の重層性について検討し、そこに「日書」に見える占卜でもしばしば用いられる原理・五行説が深く関係していることなどを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究が主な対象とする5件の「日書」のうち、3件の秦簡「日書」を含む最新のテキスト陳偉主編『秦簡牘合集』(武漢大学出版社、2014年)が刊行され、従来のテキストとの異同などの確認に時間を要し、当初計画していた睡虎地秦簡「日書」に抄録される各種占卜の整理分類が終わらず、そのためデータベースの設計・構築にも遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度に完了できなかった睡虎地秦簡「日書」に抄録される各種占卜の整理分類を優先して行い、それに基づいてデータベースの仕組みを考える。データベースの設計・構築については市販のソフトの利用と同時に、ITに詳しい人からの専門的知識の提供も考慮する。 睡虎地秦簡の後は、九店楚簡・周家台秦簡・放馬灘秦簡・孔家坡漢簡の各「日書」の整理分析と読解、データベースへの追加を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は最新のテキストである『秦簡牘合集』と従来のテキストとの異同などの確認に時間を要し、当初計画していたデータ入力などの謝金や新資料の実見や出土地踏査のための旅費を使用することがなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
逐次刊行される発掘報告書など必要なテキストや研究書の他、データベースの設計構築に必要な機器類などの消耗品の購入、またデータ入力に限らず、データベースの専門的知識の提供も念頭に入れた人件費・謝金、印台漢簡など新出資料の実見や出土地踏査のための旅費としての使用を計画している。
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