研究課題/領域番号 |
15K02909
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
森 和 成城大学, 民俗学研究所, 研究員 (10367146)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 古代史 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、前年度に引き続き放馬灘秦簡「日書」甲乙種の整理分類および解読を中心に行った。現在までに発掘報告書および図版・釈文が完全に公表されている「日書」類のうち秦簡「日書」については陳偉主編『秦簡牘合集 釈文注釈修訂本』(武漢大学出版社、2016年3月)が刊行されたため、この最新のテキストを底本としてこれまでのものとの異同を確認しながら、入力済みのデータを適宜修正した。その上で放馬灘秦簡「日書」乙種に見える音律占いについての分析を進めた。 またデータベースの設計・構築の下準備として、睡虎地秦簡「日書」甲乙種の逐条的な整理・分類を行い、放馬灘秦簡と比較対照することで、両者の傾向や相違について考察した。その結果、放馬灘秦簡にはその他の「日書」類では確認できなかった計算して吉凶を占う種類の占卜が含まれ、一瞥しただけで吉凶善悪を知ることができるという「日書」の実用面にはややマイナスであることを明らかにした。また占いの対象となる行為では睡虎地に比べて盗者・畜獣の他、伐木が多い傾向があり、このような特徴は放馬灘1号秦墓から計算をするための算籌や木材についての記載がある木板地図が出土している点を踏まえれば、被葬者の志向や職掌と何らかの関連性があると考えられる。これらについては、早稲田大学文学部アジア史コース連続講演会「アジア史のひろば」で「占いから覗き見る中国古代の人々」と題し、その一部を発表した(2016年10月21日、於早稲田大学)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度まで準拠していたテキスト『秦簡牘合集』の釈文注釈修訂本が刊行されたため、再度データの確認が必要になったこと、また睡虎地秦簡「日書」の整理分類に基づき、放馬灘秦簡の分析を行った結果、後者にのみ見える独自の占卜の種類があることが判明したため、データベースの設計に見直しが必要になったことなどにより、いくらかの遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
放馬灘秦簡など例外的な占卜の扱いは今後の課題とし、当面は睡虎地秦簡「日書」に抄録される各種占卜を基にデータベースの設計・構築を行う。これについては大学院での同窓であり、かつITに精通する人物の協力を得る。 引き続き放馬灘秦簡の整理分析と解読を行い、その後は周家台秦簡・岳山秦墓木牘の秦代「日書」を対象とし、データの拡張や比較分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
睡虎地秦簡および放馬灘秦簡の整理分類を進めた結果、データベースの設計に見直しが必要になり、データ入力について適任者の確保ができなかったこと、新資料の実見や出土地踏査のための時間が取れなかったことなどにより、計画していた謝金や旅費が残り、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
逐次に刊行される発掘報告書など必要なテキストや研究書の購入の他、データベースの設計・構築に関連する諸費用(人件費や謝金、物品費)としての使用を計画している。
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