補助事業期間の延長を申請した最終年度は、期間中の学会発表や論文などの成果を一つにまとめることに専念した。まずMicrosoft Excelベースで入力および更新を続けてきた秦漢時代の「日書」3件5種(睡虎地秦簡・放馬灘秦簡・孔家坡漢簡)のデータに基づき、占辞ないし処法の有無によって2類に大別し、占辞などがあるものは特定の1日における複数の行為の吉凶禍福について述べるもの、特定の一つの行為に対する吉日および忌日を述べるもの、特定の災禍や疾病への対処法や祭祀における祝辞などを記したものの3種類に、占辞などがないものは占法原理あるいはそれに関係すると思われる「数」について述べるもの、数術家の世界観や死生観などに関わる内容が中心になっているものの2種類にそれぞれ細別し、また研究上の余白として「その他」を設定した上で全ての条文を分類整理した。この分類は今後も増加が予想される「日書」類を研究する上で最も基礎的な分類になると思われる。また占いの対象となっている「取妻出嫁」(婚姻)や「祭」、「土功」などの行為別に分析を行い、それぞれ「日書」の傾向を数値として明示した。これらの分類やデータ分析の結果は研究成果報告内容の一部とした。 また放馬灘秦簡「日書」乙種・丹と北京大学蔵秦代木牘「泰原有死者」を主な史料として中国古代の墓で行われる祭祀儀礼について分析し、伝世文献で一般的とされる「古は墓祭せず」(後漢・蔡ヨウ『独断』巻下など)という言説が必ずしも漢代以前の状況を反映していないことなどを明らかにし、研究成果報告内容の一部とした。
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