研究課題/領域番号 |
15K02913
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
江川 式部 明治大学, 商学部, 兼任講師 (70468825)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国史 / 東アジア / 隋唐五代 / 南北朝 / 祭祀儀礼 / 石刻資料 / 仏教石刻 / 出土資料 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国隋唐礼制研究に新たに石刻資料の活用を促すための研究基盤づくりを目標としており、本年度は、初年度に引き続き①各種石刻に関する所在情報と研究史の整理、②重要な碑石に関する現地調査、そして③初年度・本年度の研究成果をふまえた研究報告を行うという計画であった。 ①の各種石刻に関する所在情報と研究史の整理については順次進めているが、一方で従来の伝世文献に基づく研究の現状や文献史料そのものの性質を再確認しておく必要が生じたため、③の研究成果報告としては、2016年7月に佛教大学で開催された比較思想学会近畿支部例会(佛教大学文学部:田山令史教授主催)において「中国中世の礼制構造―唐朝における礼・敬・孝・恩を手掛かりに―」と題する研究発表を行い(報告要旨は『比較思想研究』43号に掲載)、また2017年2月には大正大学で開催された「学術と支配」研究会例会(大正大学文学部:榎本淳一教授主催)では「唐代礼書の系譜」と題する研究発表を行った。 また②の現地調査については、当初予定していた陝西を、新出資料の公開状況に鑑みて次年度にまわすこととし、本年度は先に中国東北部(北京市・河北省・遼寧省)の調査を行った。このほか、雲南(一部四川を含む)地域の仏教石刻に関する整理をまとめて「大理時代の仏教文物」(氣賀澤保規編『雲南の歴史と文化とその風土』、勉誠出版、2017年3月)に発表し、また伝世する礼制史料研究として「史料紹介 唐・王涇撰『大唐郊祀録』」(『法史学研究会会報』第20号、2017年3月)を発表した。加えて日本古代の礼制と隋唐礼制との差異を考察する意味から、2015年に吉川弘文館より刊行された稲田奈津子著『日本古代の喪葬儀礼と律令制』の書評を『法制史研究』第66号(2017年3月)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果として、①各種石刻に関する所在情報と研究史の整理については、「大理時代の仏教文物」(氣賀澤保規編『雲南の歴史と文化とその風土』、勉誠出版、2017年3月)の刊行を行ったが、それ以外の地域についてはまだ整理が間に合わず文章化できていないため、急ぎ作業を進めているところである。また②の現地調査では中国東北部(北京市・河北省・遼寧省)の古道沿いの城鎮を調査できた。このほか③初年度・本年度の研究成果をふまえた研究報告では、比較思想学会近畿支部例会及び「学術と支配」研究会において、従来の文献史料に基づく礼制研究の現状と課題とを発表することができたことから、研究状況としてはおおむね順調と捉えている。 ただし、個別の石刻資料に関する研究史の整理と、拓本の国内所在確認については、初年度来の整理の遅れを引きずっている部分があるため、次年度前半はこの作業に集中し研究を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の柱となる各種石刻に関する所在情報と研究史の整理については順次進めているが、出土文物関連書の中国での出版予定が遅れるなどしているため、新出土碑刻の情報整理については進んでいない部分がある。このため、次年度では既発表の碑刻の情報を2015年発表分までとし、それ以後のものについては把握に努めるものの本研究における整理の対象からは外すなどして対応したい。またいまひとつの研究遂行上の問題点として、近年国内各大学の紀要類の多くが電子媒体化しているため公開時期が遅滞する傾向にあり、この点についてもやはり情報を2015年度公開・刊行分までとするなどの対応をして臨みたい。 また現地調査では、次々と新史料が出土している陝西の調査を次年夏期に予定しており、そのための情報整理を次年度前半期までに集中して進める予定である。 なお本研究課題が目的とする「礼制研究における石刻資料活用方法の開拓」に関する研究報告については、次年度にも既に研究発表の依頼をいただいていることから、既存の文献史料に基づくこれまでの成果に対して、どのようなアプローチが可能となるのかを研究提案できるよう努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の実支においては、データ入力を自分で行ったため当初予定していた人件費及び翻訳料充填予定分5万円を節約できたこと、また石刻情報・研究史整理の公刊に関して雲南地域分の一部を一般刊行書に掲載できたため、必要と考えていた予算17万円分を次年度に繰り越すことが可能となった。また予定していた国内調査が行えなかったことによる国内旅費約17万円の予算繰り越しが生じたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由により生じた次年度使用額については、刊行が遅れているとの情報があった中国石刻関連書籍の購入費用の補助、及び拓本の国内所蔵先の調査、また初年度に購入を見合わせたデータ印刷用レーザープリンタの購入と成果刊行費の補助に使用する予定である。
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