10~13世紀の東部ユーラシアにおける仏教の展開に騎馬遊牧系国家である契丹(遼)の存在を積極的に位置付けたことに本研究の学術的意義がある。周知のとおり日本,朝鮮半島,中国,チベット,モンゴル,東南アジアなどの諸国・諸地域には仏教が根付き,これらの国々や地域を包括した東部ユーラシアは現在に至るも一大仏教圏としての側面を有している。この広域世界における仏教の展開には,中華王朝と共にその北方にあった騎馬遊牧系国家もまた重要な役割を果たしてきたのである。仏教が多様かつ多元的な東部ユーラシアを形成・維持するツールとして歴史的に機能してきたことを明らかにしたところに本研究の社会的意義がある。
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