平成30年度は、レーゲンスブルクで開催された「永久帝国議会」における『皇帝主席委員文書』に関してデータ化した部分の整理作業を行った。これまで本研究期間において、データ化した文書を項目別(皇帝から主席委員への指示事項、主席委員と補佐官の間の情報交換、主席委員と帝国等族の使節との間の情報交換、その他個別案件毎)に整理した情報の統合および再整理を行った。この作業により、Berichteの1662年~1727年の部分とWeisungenの1662年から1806年の部分の整理が完了した。 ここで得られた項目別の情報を同時代の神聖ローマ帝国およびヨーロッパの政治的情勢との関連を検証するために、従前より独自に作成している「近世神聖ローマ帝国年表」に関連づける作業を行った。この作業により17世紀後半から18世紀前半までの政治情勢と永久帝国議会の相互関係を動態的に把握する基礎的なデータを備えることができた。この作業の完成により、帝国等族の人的関係および永久帝国議会の使節の人的関係と政治情勢および永久帝国議会との関係を複合的に関連づけることが可能となった。 さらに本年度は、近年の近世神聖ローマ帝国国制史の論考を読むことにより、近年の学界動向の問題点の把握に努めた。特に、ウィーン宮廷に関する研究、コミュニケーションをめぐる問題、歴史的な空間把握をめぐる新しい研究成果を「永久帝国議会」の総合的な把握に活用する必要性が明らかになった。
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