研究課題/領域番号 |
15K02929
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小原 豊志 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10243619)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 反知性主義 / 白人性 / 福音主義 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀の随所に見られた反奴隷・反黒人の思想・活動・立法を検討対象にして、そこに潜む人種差別主義思想を白人性概念と反知性主義というアメリカ合衆国独特の知的状況を接合した分析視角から再検討することにより、従来、白人優越主義という非歴史的概念で説明されてきた同国の人種差別的現象の発現要因を解明しようとするものである。 こうした課題のもとに、研究初年度にあたる2017年度は、まずリチャード・ホフスタッターの古典的名著である Anti-Intellectualism in American Life (『アメリカの反知性主義』)の精読を通じてアメリカ史における反知性主義的現象の全体像を把握した。そのうえで、反知性主義の基本的生成要因とされているキリスト教福音主義の発展過程を植民地期の「大覚醒」から19世紀前半期にかけて追跡した。これと同時に福音主義が浸透した南部のキリスト教会や南部デマゴーグによる奴隷制擁護論を宗教的奴隷制擁護論と社会学的奴隷制擁護論とに分類し、それぞれにおける反知性主義的要素と白人性的要素を析出した。 以上の作業により、アメリカ合衆国の反知性主義の基層には同国で独自の発展を遂げたキリスト教福音主義の世界観があることが明らかになるとともに、そのもとで絶対視された聖書の原理主義的理解が当時生成途上にあった白人性概念と結びつき、人種にもとづく特殊合衆国的な奴隷制擁護論を構築したことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の課題は、本研究課題の遂行にとって前提となる反知性主義概念の把握とその生成過程の追跡、および反知性主義と白人性を接合した観点からの奴隷制擁護論の再検討にあったが、おおむねその課題は達成されたため、上記の自己評価になった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、反知性主義と白人性を分析概念として、関連資料の精力的収集とその再検討のもとに19世紀の反黒人的思想・活動・立法を検討する予定である。具体的には、奴隷制度が廃止された南北戦争以降期における反黒人団体の思想と活動を対象に分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外における資料調査を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には関連資料の入手、必要備品の購入、海外資料調査を計画的に行うことにより助成金を費消する。
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