本研究は反知性主義、および白人性の分析視角のもとに、建国期以降、19世紀をつうじてアメリカ合衆国で唱えられた黒人奴隷制擁護論、人民主権論、反黒人思想の言説分析をつうじ、アメリカ型民主主義に内在する人種差別性を解明したものである。 具体的には南部奴隷制擁護論、人民主権論のアンテベラム的展開、および南北戦争以降期の異人種間結婚禁止論を分析することにより、これらの言説には聖俗両面における人民の絶対的平等を前提とする反知性主義特質が色濃く反映していた一方で、その「人民」を人種によって境界づける民衆の人種意識が強い影響を及ぼしていたことを明らかにした。
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