研究実績の概要 |
池田嘉郎責任編集で『世界戦争から革命へ(ロシア革命とソ連の世紀1)』を刊行し、その序論「ロシア革命とは何だったのか?」で、従来のロシア革命およびソ連に関する研究史上の問題を指摘し(ボリシェヴィキの提示した物語に取り込まれていたという点)、今後はボリシェヴィキの物語を支えていた近代史観そのものの崩壊という立脚点から、あらたな研究を展開すべきであると提起した。同書では第6章「ボリシェヴィキ政権の制度と言説」も執筆し、革命直後の内戦期における国制の転換について、二月革命期の立憲主義との比較に基づいて叙述した。同書を第1巻とする全5巻のシリーズ『ロシア革命とソ連の世紀』では、6人の編集委員の一人を務めた。このシリーズの内容を国際的に紹介するために、Ёсиро Икэда, Проект японских историков ≪Российская революция и век СССР≫(池田嘉郎「日本の歴史家のプロジェクト『ロシア革命とソ連の世紀』)をロシアの雑誌Историческая и социально- образовательная мысль(『歴史・社会教育思想』)に発表した。学術的な論稿としてさらに、「ロシア革命からソ連へ:実現したユートピアの歴史」および「和田春樹のロシア革命史研究をめぐって : 複合革命と『世界戦争の時代』」を発表し、ヨーロッパ史や20世紀史の文脈を離れ、ロシア史の文脈からロシア革命とソ連を見るべきであることについて論じた。「マリヤ・ココシキナの手記」ではアーカイヴ史料に基づき、革命ロシアを代表する立憲主義者ココシキンとその妻マリヤの伝記の一側面を明らかにした。ロシアにおける学界動向を、「ロシア革命研究の最先端―各国の歴史家はどう見ているのか」でまとめた。研究成果はまた、東京、札幌、シンガポールで開かれた学会で、ロシア語および英語でも発表した。
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