研究課題/領域番号 |
15K02933
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 晶子 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (70608653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヨーロッパ史 / ドイツ史 / 西洋中近世史 / ドイツ中近世史 / 中世都市 / 教会 / ニュルンベルク / 都市史 |
研究実績の概要 |
近年、聖と俗の交差する場所として教区教会が注目されている。平成23-24年度の科研費研究課題(研究活動スタート支援)では、都市と教会の共生的関係を聖職者である教区主任司祭の活動から考察したが、今回の研究では、中世後期ヨーロッパの諸都市においては、市参事会によって任命され、実質的に教会を管理していた俗人である教区教会後見人の活動から、都市と教会の共生的関係の考察を深化させる。 平成27年度の主要な研究実績は、5月にドイツ・ニュルンベルクの文書館で行った史料調査と共著論文集に掲載された論文の刊行である。 5月のゴールデンウィーク期間を利用し渡独し、ニュルンベルク市内にあるバイエルン州立文書館、ニュルンベルク市立文書館、そしてバイエルン・ルター派ラント教会文書館ニュルンベルクを訪れた。どの文書館も史料のデジタル化を進めておらず、また詳細な目録もインターネット上での公開は行っていないため、この現地での史料調査は必須であった。今年度は短期間ではあったが、文書館ごとに夜間まで開館している曜日を設けているので、この時間差を利用し、効率よく史料収集が行えた。現在、収集した史料の精読、分析を進めている。 また今年度の調査の成果の一部を、2016年3月刊行の神崎忠昭編「断絶と新生 中近世ヨーロッパとイスラームの信仰・思想・統治』(慶應義塾大学出版会)に掲載された論文で発表することができた。 今年度は学術的な著作や報告以外にも、多摩川美術大学生涯学習講座公開連続講座「世紀を歩く-12世紀」第5回「中世都市の誕生」(2015年6月6日、於中町ふれあいホール)を担当したり、森井裕一編『ドイツ史を知るための50章』明石書店(印刷中)の分担執筆も行い、研究成果の一部を一般向けにも公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年5月のドイツ滞在において、バイエルン州立文書館Staatsarchiv Nuernbergとニュルンベルク市立文書館Stadtarhiv Nuernberg、そしてバイエルン・ルター派ラント教会文書館ニュルンベルクLandeskirchliches Archiv Nuernberg der Evangelisch-Lutherischen Kirche in Bayernで史料調査を行ったが、特にバイエルン州立文書館Staatsarchiv Nuernbergでは、都市債券「永遠の金」帳簿(Ewiggeldbuecher)であるLosungamt, Baende, Schuld- und Ewiggeldbuecher Nr. 69(1091 fol.)とNr. 70(353 fol.)を確認することができた。今までの研究で、都市債券「永遠の金」とは市民が都市金庫から購入する返却不可の債券のことであり、金利は購入者の意志に基づき教会への寄進や貧民救済に使われていることが判明しており、また同文書館に保存されている教会関連証書を集めたKirchenurkundenの中、本研究課題の主対象である教会後見人に関する記述のある証書が約80通存在するが、この中には教会後見人が寄進者の代わりに都市債券「永遠の金」を購入したことが記載されている証書も多く確認できたので、初年度はこの「永遠の金」帳簿の調査から始めた。また帳簿に記載されている債券購入者については、ニュルンベルク市立文書館にて情報を集めることが可能であることを現地で確認してきた。現在ドイツで収集した史料の精読、分析を進めており、おおむね順調に進捗しているため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は夏期休暇期間に1ヶ月程度の長期史料調査を行い、平成27年度に調査した都市債券「永遠の金」帳簿に記載されている債券購入者について、ニュルンベルク市立文書館Stadtarchiv Nuernberg等で調査を行い、同定作業を進める予定である。またこの期間のドイツ滞在を利用し、ドイツ人研究協力者との面談、情報・意見交換も行う予定である。 その他には、教会証書(Kirchenurkuden)の分析成果から明らかになった教会後見人の活動に関して、できるだけ早い時期に学術論文にまとめ、発表できるよう努力する。またプロジェクト全体の中間報告として積極的に日本の学会、研究会で報告を行っていく。 平成29年度は都市債券「永遠の金」帳簿の分析結果をまとめ、学会、研究会等で積極的に報告を行い、研究成果広報用パンフレット、研究報告書を作成していく。研究成果をまとえていく過程で、史料に取りこぼしがあった場合は、1週間程度渡独する可能性もあるが基本的には平成29年度は国内で研究成果をまとめることに専念する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた物品(消耗品)が、年度末に割引価格で購入できたため、若干の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の物品(消耗品)購入に当てる。
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