研究課題
基盤研究(C)
ヨーロッパ中世初期のメロヴィング朝フランク王国においては、農業以外の仕事を行う多様な隷属民が存在した。彼らはなお「奴隷」と形容できる存在であり、王権や教会もまた「奴隷制的な社会」の存続に貢献した。しかし、「教会における奴隷解放」に見られるように、種々の解放は身分的に曖昧な集団を生み出し、自由と隷属との境界をきわめて錯綜したものへと変化させ、次第に奴隷制が崩壊していった。
西洋中世史
古代ローマの奴隷制がいつどのようにして消滅したのかという問題は歴史の一大問題である。これまでとは異なり、農業以外の仕事に携わる隷属民に注目し、中世初期における奴隷制の展開とその社会背景を明らかにすることで、奴隷制の存続と消滅をめぐる議論に、そして古代から中世への転換をめぐる議論に新たな光を当てることができた。また本研究の成果は、歴史の負の遺産とも言える奴隷制を、中世ヨーロッパ初期の社会の特徴から見直すことにも役立つであろう。