研究課題/領域番号 |
15K02938
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高田 京比子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40283668)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ヴェネト / 河川 / ヴェネツィア / イタリア / 中世 |
研究実績の概要 |
本年度は、2017年夏締め切りで「中世ヴェネトにおける準都市と河川」と題する論文を執筆することが決まり、ピアーヴェ川、ブレンタ川、シーレ川、バッキリオーネ川に関する文献を収集した。また河川沿いの代表的準都市集落であるバッサーノに注目し、文献・史料収集を行った。本論文は、2016年2月の日伊国際シンポジウムで協力させていただいた東京の研究グループから誘いを受けたもので、同グループによるヴェネト丘陵都市調査研究の成果を集成した単行本に収録される予定である。そのため、ポー川の研究はいったん後回しにし、本研究グループの関心に沿う形でヴェネトの丘陵地域にも研究調査を拡大することにした。また、昨年度末には、建築史の別の研究グループが、『ヴェネツィアのテリトーリオ』(鹿島出版会、2016年3月)と題する本を出版している。これはヴェネツィアとプレアルピのあいだに広がる、水都ヴェネツィアを支えた後背地の河川沿いの地域を調査・研究したもので、本年度秋に依頼を受けて本書の新刊紹介を行った。この仕事を通じて、レステーラ(舟を引く牛や馬が通る堤防上の道)・水車・筏流しの実態や現地の環境に関する有用な知見が得られた。2016年2月に行ったカンツィアン氏の講演「アドリア海、アディジェ川、アルプスの間(現在のヴェネト地方)における資源管理と政治軍事的戦略(12-15世紀)」に関しては、その日本語訳を、解題と当日の議論の概要を添えて『神戸大学史学年報』において刊行した。また9月のイタリア訪問の際にヴェローナ大学のヴァラニーニ教授と面会し、2017年の招聘についての打ち合わせを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は研究成果公開促進費(学術図書)の交付を受けて単著の出版(高田京比子『中世ヴェネツィアの家族と権力』京都大学学術出版会、2017年3月)を行い、そちらに予想外の時間がかかったため、本科研の研究に遅れを来した。具体的には2016年度中に完成予定であった、ヴェネトの河川を通じた都市間・地域間交流を描く予定の論文「川が結ぶ北イタリア」の執筆が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度執筆できなかった「川が結ぶ北イタリア」を完成させると同時に、夏が終わるまでに「中世ヴェネトにおける準都市と河川」を書き上げねばならない。「川が結ぶ北イタリア」においては、まずヴェネトの河川交通網の概観を行い、ついで特に史料を用いて掘り下げる部分として、ブレンタ川の木材交易を通じたヴェネツィアとプレアルピの関係、アディジェ川をめぐるヴェローナとヴェネツィアの協力関係を考えている。「中世ヴェネトにおける準都市と河川」ては、すでに述べたようにバッサーノを扱う。文献収集はほぼ終えているので、ヴェネトの河川や政治権力に関するさらに詳細な知識習得と史料の読解に集中し、2本の論文を仕上げる予定である。秋からはヴァラニーニ氏の講演会の準備にかかる。本講演会は当初の計画通り関西比較中世都市研究会との共催で行う為、講演原稿の日本語訳、日本史または東洋史の側のコメントのイタリア語訳を作成することが主な仕事となる。また余裕があれば、ポー川、アディジェ川に関する史料調査をすすめたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に、2013-2017年度科学研究費基盤研究(S)「わが国における都市史学の確立と展開にむけての基盤的研究」の協力を得て、すでにパドヴァ大学のダリオ・カンツィアン氏を招聘し関西で研究集会を行ったため、本年度は外国人研究者の招聘は行わなかった。そのため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度は当初の予定通り、ヴェローナ大学のヴァラニーニ氏を招聘する。またその打ち合わせや資料収集のために9月にイタリアに赴く。またヴェネトの河川関連の文献が古書でしか手に入らず、予想外に高額であったため、これらの支払いで繰越金はほぼ消費してしまうと思われる。余裕があれば、ヴァラニーニ氏の講演に対するコメンテーターの謝金も当科研で支払うことにしたい。
|