本研究は中世のヴェネツィアの後背地を中心に、河川交通と紛争・秩序の関係を考えるものである。具体的には、イタリアから研究者を招聘して河川と都市の政治・経済関係の概観を得ると共に、ポー川の通行をめぐるヴェネツィアとクレモナの協約、ブレンタ川をめぐるバッサーノとヴェネツィアの関係を分析した。ヴェネト地方においては河川交通が重要な役割を果たしていたこと、12世紀のヴェネトのコムーネ間紛争は河川交通をめぐるものであったこと、ヴェネツィアだけでなく後背地の河川沿いの諸都市にとっても河川交通の維持は重要な事柄であったこと、河川交通の維持が時に紛争を緩和する働きをすることもあったことが明らかになった。
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