研究課題/領域番号 |
15K02939
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
青島 陽子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20451388)
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研究分担者 |
福嶋 千穂 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (50735850)
梶 さやか 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (70555408)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロシア / 中東欧 / 民族 / 宗教 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ロシアのナショナル・アイデンティティの形成を、ヨーロッパ北東部に位置するロシア帝国西部地域諸民族の相互影響関係の分析を通じて明らかにすることである。平成28年度の研究実績は、第一に、平成28年8月22日・23日にリトアニアのヴィリニュスにて、リトアニア歴史研究所との共同でシンポジウム「Entangled interactions between religions and national identities in the space of the former Polish-Lithuanian Commonwealth」を開催したことである。このシンポジウムでは、ロシア帝国の西部国境地域とその周辺の諸民族形成過程をより詳細に分析するために、宗教というファクターに着目した。当該地域の民族形成の歴史分析では、伝統的に言語に注目が集まってきた。それに対して、近年ではロシア帝国論を中心に宗教的ファクターに着目した研究が発展してきた。そこで、ナショナリズムと宗教をテーマとしながら、前近代との連続性と断絶、ネイション構築における社会変容の実態、ナショナル・ナラティヴの構築における過去の参照方法、宗派国家たる帝国とネイションの関係性など、新しい観点から当該地域の複雑なネイション形成とそれら相互の影響関係を討論した。当シンポジウムには、8 カ国から13 名が集まり、それぞれにテーマに沿った研究報告を行った。 その他、国内での学会や研究会などの機会を利用しながら、共同研究者との研究打ち合わせを行い、シンポジウムの成果の発表も含めた研究の深化を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していたシンポジウムが、当初の予定以上の規模となった。その理由としては、当科研費以外に、民間の財団からもご支援を頂くことができたため、セッションを増加して参加人数全体を増やすことが可能となったことが大きい。それに対して、リトアニア歴史学研究所が真摯に協力をしてくれたため、世界各国から第一線の研究者を集めて討論をする場を作ることができた。さらに、このシンポジウムを成果として、リトアニア歴史学研究所が国内の競争的資金を獲得することができた。その資金と当科研費を併せて、2017年度には、11月にアメリカ最大のスラヴ・ユーラシア研究学会の大会で共同で報告をし、さらに、2018年2月には東京で新たな国際会議を企画している。現在、これらの企画を進めているが、すべて実現すれば、当初の計画で予定していた以上の大きな成果を得ることになる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、最終年度は、2017年11月にアメリカのシカゴで開催されるASEEES(The Association for Slavic, East European, and Eurasian Studies)に、リトアニア歴史学研究所との共同で"Difficult Alliance: Imperial Government and Russian Nationalism on the Western Provinces of the Russian Empire, 1905-1915"と題するパネルを組織して参加をする。当パネルには、リトアニア歴史学研究所から、ロシア帝国北西部諸県の歴史研究の指導的研究者であるダリウス・スタリウナスらが参加する他、アメリカからミハイル・ドルビーロフ、ポール・ワースというロシア帝国論の最先端の研究者が参加する。さらに、2018年2月には、1905年革命とロシア帝国西部地域におけるナショナリズムに関して、東京大学を会場に国際シンポジウムを開催する予定である。リトアニア歴史学研究所から4名の研究者が参加するほか、他の研究プロジェクトとのコラボレーションも募り、複数の国外からの研究者を招き、大規模なシンポジウムとする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に関しては二十一世紀文化学術財団、2016年度に関しては三菱財団からの研究助成が得られたために、国際会議の開催に関して、かなり規模を大きくしてセクションを増加することが可能となったとともに、科学研究費補助金の支出額を抑えることが可能となった。そのために、資金を2017年度のASEEESへの参加に加えて、さらにもう一つの国際シンポジウムを開催するために次年度へと資金を回すことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
記述の通り、次年度使用として持ち越した分は、リトアニア歴史学研究所との国際共同研究が増大した分に当てていく。とくに、2017年11月のASEEESでの国際会議の参加、2018年2月の東京での国際会議の開催に次年度使用額を充当していく予定である。
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