本研究は、ヨーロッパ学界の最新の動向を念頭におきつつ、かつて科学研究費の補助を受け、専門家を糾合しつつ組織的な研究を行なった研究(科研費補助金、研究種目:基盤研究(B)、課題番号:22320146、研究期間:H22~H24年度、研究課題名:ヴァロワ朝ブルゴーニュ国家の社会・経済・文化に関する統合的研究)の延長線上に位置するものとして推進した。 すなわち、「徴収と分配」という側面からさらに踏み込み、前近代に特徴的な分散的諸権力が、どのようにして統一的中央権力へと収斂してきたのか、を問題にするということであり、「領域・法・政治システム」の問題を、「都市・市民・国家」と関連づけて把握しようとする試みなのである。こうした課題を解明していく際に一つの焦点となるのが、中近世における都市的権力と領主的上級権力との関係である。しかもそれは、対立・紛争・訴訟という形で具体的に捉えられることが多い。なぜなら、社会的秩序の安定に向けた公的機能として有力なものの一つが、「調停・仲裁・裁判」(つまり、社会的調整機能としての紛争解決)であり、中近世の西欧でそれを体現したのは、都市と領邦君主だったからである。 本研究は、アントウェルペン・ブリュッセル・レウヴェン・ス=ヘルトーヘンボスといった、中近世ブラバント公領の諸都市における市外市民とブラバント公やブルゴーニュ公、ハプスブルク家など上級権力との関係が「近代国家」形成にどのような影響を与えたか、微視的な視点から上述の課題にアプローチしてきた。そうした中、第3年度までの研究を背景としつつ、最終年度で得られた成果は、別項目で示す通り具体的な論考という形で示すことができた。
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