研究課題/領域番号 |
15K02941
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 昭人 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00124850)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 西欧現代史 / コミンテルン / アムステルダム・サブビューロー / S.J. リュトヘルス |
研究実績の概要 |
共産主義インタナショナル(コミンテルン)創設当初の国際的活動で重要な役割を果たした在外ビューローのうち、コミンテルン・アムステルダム・サブビューローに関して、既に私は平成11~12年度にその基礎的研究を終えているが、しかし前回は2年間の研究期間であったため、網羅的な史料収集には至らなかった。今回の研究の主眼は、現地文書館での史料調査・収集の徹底を図り、その上に総合的研究をめざすことにある。 初年度である本年度は、アムステルダムの国際社会史研究所での史料調査・収集に全力を注いだ。同研究所の文書館史料は、以前は閲覧のみで煩雑な特別許可を得なければ一部なりともコピーは許されなかったのだが、今回はデジタルカメラで自由に撮ることができるようになっていたため、コミンテルン・アムステルダム・サブビューローのリーフレット類が収められているコミンテルン・コレクションなど、ほとんどすべての関係文書のコピーを得ることができた。マイクロフィルムも、PDFファイルでUSBメモリーにダウンロードできた。その中には、次年度に史料調査・収集を予定しているロシア国立社会・政治史アルヒーフ(通称ルガスピ)から複製マイクロフィルムで取り寄せられ、収蔵されていたオランダ共産党ファイルやオランダ社会主義者左派の各ファイルなどもあり、現地モスクワで法外なコピー代を払わずにコピーが済ませられた。 デジカメとUSBメモリーで合わせて8GBを越えるデータを収集でき、年度後半の大半の時間はそれらのデータの印刷・分析作業に費やされたが、なにぶん厖大であり、作業の一部は次年度に持ち越しとなった。ただし、分析し終えた文書から得られた新知見の一部は、刊行準備中であった単著『戦争と平和,そして革命の時代におけるインタナショナル』および学会報告「私のインタナショナル史研究」の中に先取りするかたちで盛り込まれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の主たる作業は、上記のように国際社会史研究所の文書館史料の調査・収集であり、その成果は以下のように予想以上であった。 つまり、以前は文書館史料は時間をかけて手書きするしかなかったが、今回はすべて容易にデジカメに収めることができ、またマイクロフィルムも、以前は割高なコピーで得るしかなかったが、今回はPDFファイルでUSBメモリーに無料でダウンロードできた。そのことによって、予想以上に大量のデータを集めることができた。 大量であったがゆえに、そのデータの印刷・分析に非常に時間を要する結果となり、その作業は年度内に終えられなかったが、次年度9月の二度目の海外史料調査前までには、終えられる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、モスクワのロシア国立社会・政治史アルヒーフ(ルガスピ)での文書館史料の調査・収集が主たる作業であり、前年度と同様の、しかも既に5回ほど訪れて慣れている文書館での作業であり、時間をかければかけるだけの成果をあげられることが期待される。 初年度と次年度で収集できた史料の印刷・分析を2年間のうちに済ませ、3年目の最終年度に、これまでの研究と同様に、研究課題の解明が果たされうることが見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度末をもって九州大学を定年退職予定であり、上記の海外史料調査と収集できた史料の印刷・分析以外は、退職前の雑務と専門書(単著)の刊行作業に追われ、残りの予算を使う余裕がなかった。 次年度は退職により、他大学への非常勤講師とかもなく、本科研費による研究に専念できるので、そのために予算を活用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
モスクワへの海外出張は、現地が物価上昇中であり、予想以上の出費が見込まれるので、余裕をもった予算を充てることにする。 初年度に、上記退職前の状況であったために、パソコン購入を先延ばしにしたので、それを次年度に果たす予定である。
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