本研究では、16世紀半ば皇帝フェルディナント1世の信仰政策の検討を通じて、彼が教皇に対し信仰問題をドイツ国内で扱う方針をとったこと、これに帝国内のカトリックとプロテスタントがそれぞれ信仰問題を棚上げにする形で皇帝に協力したことが、分裂を回避し、帝国平和を維持することに繋がったことを明らかにした。したがって、フェルディナント1世の政策はアウクスブルク宗教和議の定着・実質化に寄与したと認められるが、消極的な影響ととらえられることが明らかとなり、そこから帝国国制の上では、マクシミリアン2世期の信仰問題を視野に入れて考察する必要性を指摘しえた。
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