研究課題
最終年度は、2年間の研究成果を総合しつつ、刊行予定の学術書の序論を担当している高橋暁生(研究代表者・上智大学)と結論を担当する森村敏己(研究協力者・一橋大学)が主体となって、各個の具体的な研究成果となる学術論文の相互検証と、それらを総括してまとまりのある研究成果とするための調整を行った。研究目的は、18世紀後半から19世紀後半を対象に複数の〈個人〉の「社会構想」の分析を行い、近代フランスの基層としての〈啓蒙-革命-共和政〉という単線的理解の再検討にあった。主に革命前に活躍した人々の社会構想の中に革命の芽を捉えることができた一方で、革命とその後の共和政へとつながる道筋とは接合しない思想的立場も明らかになった。また革命期のただ中を生きた人びとについては、革命の激動の中で、その政治的、思想的立場を時には大きく変転させていることを明らかにした点が本研究の重要な成果の一つである。そして、第一帝政から復古王政に至る時期、また第三共和政期に、革命の遺産がどのように受け取られ、再解釈され、何を新たに生み出すのかを、主に19世紀を生きた人物を取り上げ、分析した。革命の暴力や精神的恐慌の側面を除去する「解毒」プロセスを通して、次代に向けた社会構想や、体制を正当化するための集合記憶の構築へつなげようとしたことを明らかにした。本研究で取り上げた諸個人の社会構想は、いわば「ありうべき国家」「ありえたかもしれない社会」といった「可能性の束」である。革命前夜、彼らは未来の「可能性としての革命」を語り、19世紀には革命を振り返ってやはり「可能性としての革命」を創造したと言える。〈個人〉を起点として「可能性としての革命」の存在を明らかにし、近代フランスの複層的理解を提示する共同研究でしかなしえない以上の成果は、国際的にも大きな貢献であり、本研究のきわめて重要な意義と言えよう。
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一橋大学社会科学古典資料センター年報
巻: 38号 ページ: 60-83
Journal of Environmental Studies
巻: no.60 ページ: 25-33
徳島大学総合科学部人間社会文化研究
巻: vol.25 ページ: 68-85