本研究の特色は、公共圏の科学史研究に、市場経済の原理というこれまで欠落していた要素を導入することで、近代ドイツ科学の総合的な理解のモデルを構築する点にある。さらにこの課題には、公権力と自発的結社、科学知の公益性と営利性、都市の消費文化などの重要な問題群を新たな視点から包括的に議論することで、公共圏の科学史研究がドイツ史研究に とって持つ、豊かな可能性を提示するという意義もある。また、科学を切り口に、公共圏における知の実践と市場経済の関係性を考察する本研究は、近代社会における学知の複合的な歴史像を構築する際にも、有益な参照軸となるだろう。
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