研究課題
最終年度(2018年)は、18世紀イギリスの競売の、「1.人々の生活様式、文化、趣味を社会に伝える役割」「2.弁済方法としての役割」の補足的研究と最終年度としてのまとめを計画した。以下1,2.それぞれの概要である。1.データベース使用上の変更などが原因で、研究期間(H27~29)中に予定した必要なオークション目録、遺産目録すべてを収集検討できなかった。よって、収集済みの目録等と他の種類の関連史料を用いて、予定していた「オークション目録と遺産目録の、商品/遺産(所有物)記載のパターンの近似性の度合い」を予備的に分析した。その結果、暫定的に、オークションの商品と遺産目録の品物の記載が似ており、オークションという方法で市場にでた品物(元の所有物)の目録表記は、実生活の中の品物の所有の仕方(家内での配置など)の参考になっていた面があることを確認した。ただし、国際シンポジウム(29年)では、所有品の商品化というコンセプト自体への疑問と、オークション目録と遺産目録の記載方法に関する重要な助言を受けたため、予定していた英専門雑誌への投稿を保留し、内容を再検討することにした。2.有効活用できる史料の数が想定していたほど存在しなかったことが、研究計画上の大きな反省点である。ただし、反省点をふまえて特定の地域の特定の人間関係に条件を限定して検討すると、「債務者と債権者」の双方がオークションを利用した理由を、近世末社会の文脈で示しうる史料を確認することができた。その結果、暫定的に、オークションが、当時、人間関係の維持に重要な「信用」を確認する手法であったという見解にいたっている。4年間の研究によって、近代以降とは異なる、近世固有の消費社会の一面が明らかになりつつある。その点を含め、現在、著書(『オークションの時代―18 世紀イギリスの消費社会の一側面』慶応大学出版会)の執筆作業に入っている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
化学史研究
巻: 46 ページ: -
History of Consumer CUlture: Objects, Desire and Sociability (23-25 March 2017, Gakushuin University, Tokyo, Conferrence Proceedings)
巻: なし ページ: 80-85