研究課題/領域番号 |
15K02953
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
池上 佳助 東海大学, 文学部, 准教授 (40307294)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ホロコースト / 記憶研究 / 北欧現代史 / 第二次世界大戦史 |
研究実績の概要 |
1)2015年5月、ホロコーストからの生還者で、ユダヤ系ノルウェー人では最後の生存者であったサムエル・スタインマンが亡くなった。2016年度前半は、前年度調査で入手した証言録等の史料をもとに、戦後ノルウェー社会の中でスタインマンらのホロコースト体験の記憶がどのように忘却され、再び想起されるようになったかを論文に纏め、東海大学文学部の紀要に発表した。
2)2016年度後半は、ユダヤ系ノルウェー人のノルウェー国内における迫害体験(財産没収・一斉検挙・国内での一時収容・強制移送)に関しての公文書記録、ユダヤ人の証言・体験記などを読み込み、研究ノートの作成作業を行ってきた。現在、右に関する論文を執筆中であるが、この論文では、非ユダヤ系ノルウェー人の警察官、収容所監視員、運転手などがいかにホロコーストに自発的に関与していたか、自らドイツ占領の被害者と位置付けていたノルウェー人が一方ではホロコーストの共犯者・加害者でもあった実像を明らかにする。
3)夏季休暇を利用して、強制移送後のアウシュヴィッツでの選別、ガス殺(老人・女性・子供)と強制労働(男性)、さらには死の行進を経てブーヘンヴァルトでの解放までの生活等の現地調査のためポーランドに出張し、参考文献資料等を入手した。また、非ユダヤ人で反ナチ運動のため拘束されたノルウェー人が収容されていたマイダネクやトレブリンカ絶滅収容所、ワルシャワのユダヤ歴史博物館などを訪問し、関連資料を入手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)2015年度は研究の進捗状況に若干の遅れがあったが、2016年度前半までに前年度調査の史料整理・分析を終え、その結果を論文に纏め大学の紀要に発表した。
2)2016年度のポーランドにおける現地調査(アウシュヴィッツ、マイダネク、トレブリンカの絶滅収容所等)を夏季休暇中に実施することができたため、年度後半はポーランドで入手した史料の整理、研究ノートの作成と並行しつつ、ユダヤ系ノルウェー人のアウシュヴィッツに至るまでの国内での迫害の記憶に関する論文を執筆し、近く提出の見込みとなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
1)2017年度前半は、ユダヤ系ノルウェー人のホロコースト体験に関する2015年度のドイツ(ブーヘンヴァルト強制収容所)16年度のポーランド(アウシュヴィッツ絶滅収容所)での研究調査を踏まえ、ユダヤ人生還者の両収容所での記憶に関する論文を執筆し、発表する。
2)2017年度の夏季休暇を利用して、チェコおよびオーストリアでの現地調査を実施する。本年度はデンマークのユダヤ人のホロコースト体験に関する研究調査のため、プラハ郊外の「テレジエンシュタット収容所」およびリンツ郊外の「マウトハウゼン強制収容所」を訪ねて、「特権的ユダヤ人」として収容されたデンマークのユダヤ人に関する文献・史料の収集を行う。また、この機会を利用して、プラハのユダヤ人地区やウィーンのユダヤ博物館を訪問し、デンマーク・ノルウェーのユダヤ人との被害体験の相違や戦後の状況に関する調査、資料収集を行う。
|