研究課題/領域番号 |
15K02960
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
小野 賢一 愛知大学, 文学部, 准教授 (30739678)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヨーロッパ中世史 / 教会史 / 修道院 / 聖人伝 |
研究実績の概要 |
初年度となる平成27年度は、平成28年度以降の本格的研究とその成果の発表に向けて、バチカン図書館、教皇庁立聖グレゴリアン大学図書館、教皇庁立ウルバニア大学図書館で資料文献の収集や調査を行うとともに、教皇庁列聖省古文書講座に参加し、聖人伝の研究を開始するにあたって必要な基礎的技術を習得した。また自らの研究の基礎的な位置づけを行うために、3つの研究会(愛知大学人文社会学研究所開設記念シンポジウム、愛知大学土曜会、キリスト教史学会大会)で研究動向を総括した。 平和運動の舞台となったリモージュ市については、サン・マルシアル修道院に比べて、そのライヴァルとも言える、リモージュ司教座とサン・レオナール参事会教会のメディア戦略については、ほとんど知られておらず、まとまった研究もない、というのが現状であったが、『聖マルシアル伝』と『聖レオナール伝』という叙述史料を比較検討し、つづいて1062年のサン・マルシアル修道院側の改革文書と同年のサン・レオナール参事会教会側の改革文書を比較検討することで同修道院と同参事会教会の対立構造が鮮明となった。 同参事会教会側のメディア戦略は、12世紀には同修道院の側のメディア戦略と匹敵するほどの成功を収め、司教座と律修参事会の複合的なネットワークを構築し、領邦権力と結びついた隠修士集団と対峙するほどまでに発展することが解明された。この成果の一部は共著論文集所収の論文として刊行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聖人伝研究の基礎的技術を列聖省で習得し、共同研究において聖人伝の比較と論点の抽出を首尾よく行い、さらに聖人伝の叙述を補強する証書史料も分析できたため、達成度はおおむね順調だと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
聖人伝の叙述から得た情報と、サン・レオナール参事会教会とサン・マルシアル修道院でそれぞれ同時期(1062年)に発布された改革文書から得た情報の比較検討によって明らかになった成果を、学術論文としてまとめることが次年度の課題である。改革文書がなぜ同時期に発布されたのかという疑問を、改革文書と聖人伝を比較検討して解明し、この文書の平和運動との関連性という研究史上看過されてきた問題点を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の平成28年2月16日から2月25日にかけて西欧中世教会史資料の調査収集分析のためにローマとパリに在外研究に出かけたときに生じた費用(愛知大学規定の日当)の支払いが次年度にずれたために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
年度末の平成28年2月16日から2月25日にかけて西欧中世教会史資料の調査収集分析のためにローマとパリに在外研究に出かけたときに生じた費用(愛知大学規定の日当)に使用される。
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