研究課題/領域番号 |
15K02973
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
樋口 和美 (水本和美) 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (80610295)
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研究分担者 |
二宮 修治 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (30107718)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 考古学 / 肥前色絵磁器 / 17世紀中葉 / 材料 / 技術 / 意匠 / 祥瑞 / 自然科学分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、1640年代に誕生した肥前の色絵磁器が、1650年代~1660年代初頭の古九谷様式の隆盛から初期鍋島誕生にいたる過渡期に、その技術と意匠を飛躍的に進化させたことについて、考古学と文化財科学の立場から、以下の3つの目的と方法を試みた。 【1】17世紀中葉の国内の陶磁器の受容の様相を、考古資料(特に、江戸遺跡で1657年におきた明暦大火の罹災一括資料)を用い、窯跡出土陶片や伝世品、景徳鎮磁器などと比較して意匠的な志向を見出す。【2】自然科学分析(蛍光X線分析、ICP発光分光分析など)により、胎土調整や色絵の発色技術を解明する。【3】1657年の明暦大火罹災資料-失われた美術品-を、考古学と自然科学の成果により解明した材料を用いて「復原」する。 【1】では、代表者を中心として行った江戸遺跡や東日本を中心とした出土陶片の蒐集作業と研究会を通じた全国レベルでの比較によって、戦国時代から引き続いた中国磁器や国産陶器への需要が、17世紀の肥前の色絵磁器の意匠への要求を生んだ背景を予察することができた。【2】では、有田町教育委員会の中樽一丁目遺跡・泉山一丁目遺跡から出土した素地の材料や、今右衛門窯・今右衛門古陶磁参考館から提供を受けたサンプルにより、顔料等の分析を行い、材料や製作工程との関連を調査できた。【3】では、①陶磁器原材料の生成、②素地の精製過程、③上絵付け材料、などについての分析を行うことができた。これは、つまり、主として生産地比較の視点で行なわれてきた陶磁器の胎土分析から、原料の調達と制作工程の一連の作業を通じた化学変化を見る視点を提供し、「復原」に向けたレシピ解明の一歩となった。絵付けの際の詳細な工程と意匠の関連(コンパスの使用など)も明らかにしたが、これらを明暦大火罹災資料の分析から求められていた意匠の枠組みは明らかになった。資料制作作業は課題に残した。
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