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2015 年度 実施状況報告書

サウジアラビア北西部における古代遊牧民の埋葬・祭祀遺跡の研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K02974
研究機関金沢大学

研究代表者

足立 拓朗  金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (90276006)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード青銅器時代 / アラビア半島 / 祭祀 / 埋葬 / 銅石器時代
研究実績の概要

サウジアラビア、タブーク州において予定通りに青銅器時代の祭祀遺跡を調査した。本調査研究はサウジアラビア考古観光委員会の協力の下に行われた。遺跡の分布調査を計画していたが、発掘調査も可能となったため、予想以上の成果を挙げることが出来た。
調査は紅海沿岸のワディ・シャルマ周辺地区に対して行われた。1970年代に分布調査が行われており、その成果との整合関係を明確にすることが目的の一つであったが、当時の資料が残っておらず、正確な同定は困難であった。複数の遺跡を分布調査で位置や内容を確認したが、これらの遺跡は新発見のものと考えられる。発見した遺跡の多くは盗掘の被害を受けて破壊されており、早急の調査・保存が望まれる。調査した遺跡はウンム・グルナイン1遺跡、アル・バルカ1遺跡である。
この2遺跡には後期銅石器時代と考えられる環状祭祀遺構(Enclosure)と前期青銅器時代と考えられる円塔墓(Tower Tomb)と台状祭祀遺構(Platform)が含まれていた。この3遺構がどのような祭祀・埋葬に使用されていたのか、これまでの研究では明らかにされていなかった。今回の調査では2遺跡の遺構全てを発掘調査することができた。上記3遺構の系統関係を示す内部施設の特定に成功し、これら通時的に関連していることが明らかになったことが大きな成果である。また土器や人骨なども出土しており、これらの分析により時期の特定や他地域との関係も考察できる展望が生まれた。
サウジアラビアの文化財に関しては、特別な許可がなければ調査終了時の共同執筆報告書完成以前には刊行物としての論文執筆はできない。そのため今年度は関連地域のシリア、イランの古代遊牧民の葬制についての論文を発表した。最終的にはこれらの論考と関連づけて、サウジアラビア古代遊牧民の独自性を論じる計画である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画以上に進展しているとする理由は発掘調査が実施できたことによる。当初の計画では分布調査・遺物調査であったが、2遺跡について発掘調査を実施することができた。
そして発掘調査により、これまで用途や時期が不明だった環状祭祀遺構(Enclosure)、円塔墓(Tower Tomb)そして台状祭祀遺構(Platform)について、その特徴的な構造を明らかにすることが出来た。サウジアラビアにおいてこれらの遺構は一般的なものであるが、沙漠の中に築かれていることから、これまで正確な分布調査や発掘調査は行われてこなかった。
本調査研究によって明らかになった構造とは立石が中央に配置された小型祭祀空間であるが、これまの調査では埋没していたため正確な様相が掴めていなかった。アラビア半島は立石遺構が数多く存在することで有名な地域であり、この立石を持つ小型祭祀空間がアラビア半島の立石状遺構との関係が新たなテーマとして浮上してきた。また人骨や土器などの出土遺物も得られている。特に土器は後期青銅器時代のミディアン式土器に類似している。
新たな研究の展望も生まれた今年度の成果はアラビア半島の青銅器時代の考古学に大きな進展をもたらすものと考えられる。

今後の研究の推進方策

大きな方策としては、計画で予定していなかった発掘調査の実施である。そして、今年度の調査成果によって、調査の方向性がより明確になった。当初は青銅器時代であることが確実な円塔墓を集中的に調査する予定であったが、今年度の成果により環状祭祀遺構と台状祭祀遺構が円塔墓と系統関係が存在することが明らかになったため、これら2つの遺構についても調査を実施したい。これにより、研究目的である、アラビア半島古代遊牧民の独自性を明らかすることの見通しが得られた。
今後はすでに有望な遺跡であることを事前調査(学術振興会・二国間交流事業)で確認している、ワディ・グバイ遺跡、ワディ・モホラク遺跡の調査を行う。この両遺跡には保存状態が良好な環状祭祀遺構と台状祭祀遺構が存在しており、円塔墓との関係をより明確に立証することが可能である。
また、協力して調査を進めているサウジアラビア考古観光委員会では、大型の円塔墓を博物館に移築・保存する計画を進めており、このプロジェクトへの協力を要請されている。本研究はサウジアラビアの博物館と協力してすすめることとなっていることから、この移築事業にも可能な限り参画していきたい。
サウジアラビアとの共同報告書が刊行される前は、本調査の資料を使用しての論文は発表できないので、イラン、シリア、ヨルダンなどの周辺地域の古代遊牧民の墓制についての論文発表を行なう。これらの研究をふまえて、最終年度にアラビア半島の古代遊牧民の独自性を明確にしていきたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Shell Ornament Processing Methods in Northern Syria during the Early and Middle Bronze Ages2016

    • 著者名/発表者名
      Takuro Adachi
    • 雑誌名

      Bulletin of Ancient Orient Museum

      巻: 35 ページ: 1-14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] イラン、ギーラーン州出土の鉄器時代女性土偶の時期について2016

    • 著者名/発表者名
      足立拓朗
    • 雑誌名

      青山考古

      巻: 35 ページ: 1-10

  • [学会発表] サウジアラビア、タブーク州における初期遊牧民遺跡出土の貝製品について2015

    • 著者名/発表者名
      足立拓朗・藤井純夫
    • 学会等名
      日本オリエント学会第57回大会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道・札幌市)
    • 年月日
      2015-10-18 – 2015-10-18
  • [学会発表] シリア中部、ビシュリ山麓ケルン墓群出土の貝製品の年代について2015

    • 著者名/発表者名
      足立拓朗・藤井純夫
    • 学会等名
      日本西アジア考古学会第20回大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県・名古屋市)
    • 年月日
      2015-06-14 – 2015-06-14

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公開日: 2017-01-06  

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