縄文時代中期・後期の東日本出土人骨を用い、遺体の特異な取り扱いと社会の複雑性、祖先観念について研究した。遺体の特異な取り扱いとしては、その一部を離断する遺体毀損儀礼が認められ、生前の特殊な職能などにより再生阻止を願って行われた儀礼と考えた。社会の複雑性については一部で階層化社会との議論があるが、墓地分析の結果からは平等な社会であることが明らかになった。 生前の特殊な地位・職能によって死後の再生を恐れられ、遺体毀損儀礼を経るというのは、階層化社会で社会的上位層が埋葬時に手厚い取り扱いを受けるような祖先観とは異なり、階層化以前の社会であるとの本研究の結果と整合性を持つものである。
|