研究課題/領域番号 |
15K02984
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
新里 貴之 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (40325759)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小規模島嶼 / 弥生時代 / 弥生土器・弥生系土器 / 平安時代 / 土師器 / 越州窯系青磁 / 須恵器 / 清朝磁器 |
研究実績の概要 |
4月末~5月初,トカラ列島中之島地主神社敷地内における発掘調査を実施した。その結果,遺構は確認できなかったが,弥生時代と平安時代の良好な遺物が大量に出土した。弥生土器は土器型式からみて,少量の九州北部系,九州中部系土器,多量の九州南部系土器,大隅諸島系,奄美諸島系など,多様な系統が確認された。このうち奄美系や大隅諸島系がトカラ列島に分布する在地土器ではないかと考えられる。石器は凹石を主体として,剥片石器や有溝砥石が少量得られたほか,小型扁平片刃石斧,磨製石鏃も出土した。平安時代については,1個体分の土師器甕,3個体の須恵器壺,1個体の越州窯系青磁坏がセットで出土した。特に越州窯系青磁はトカラ列島で初確認されたものであり,時代が下るが表採品のなかに越州窯系青磁水注も得られた。これまでトカラ列島には,弥生時代~平安時代の空白期があったが,発掘調査結果,その空白期を埋めることができ,また,弥生時代は南北から各地域の土器が広域流通している実態が把握された。平安時代は土師器,須恵器,越州窯系青磁がセットで出土した。特に越州窯系青磁水注は,近年,長崎でも確認されており,博多―長崎―中之島―喜界島を結ぶラインが存在したことを示している。 ほかにも,トカラ列島平島における清朝磁器が明治27年の中国船籍らしき無人船由来であることを,考古学・文献・民俗誌などから突き止め,日本考古学協会において発表し,鹿児島考古第46号に論文としてまとめた。 平成27年度から継続している分布調査では,トカラ列島全域から表採した土器のうち,先史時代遺物について,九州系統であるのか,あるいは奄美・沖縄系統のものであるのかを検討した。その結果,縄文時代中期以降は,奄美・沖縄系統の土器文化であるが,古墳時代以降,九州系統の土器文化が南漸し,平安時代まで継続する可能性が指摘でき,これを廣友会誌9号に論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本来は平成28年度で2回実施予定していた発掘調査であったが,天候不順などの理由で1回で断念せざるを得なかった。しかしながら,次年度予定の学会発表,論文発表などを前倒しで実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はじめにおいて発掘調査を実施し,その予定を果たしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に2回予定していた発掘調査が1回しか実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度において,放射性炭素年代分析と報告書刊行費用により使用する。
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