今年度は発掘調査報告書を刊行する予定として,50万円強の基金を延長し,その作成を実施していたものの,今年度のトカラ列島中之島地主神社敷地内(宮水流遺跡)第2次発掘調査を実施したところ,トカラ列島で初検出となる弥生時代の遺構(土坑・ピット)や,琉球列島ではあまり類例のない平安時代の遺物のセット(土師器・須恵器・越州窯系青磁など)が多量に得られたことで一連の発掘調査成果が一気に増加した。 また,平島の考古資料調査では,明治27年の漂着船起源と考えられる清朝磁器として新たに完形品のレンゲが民家に保管されていることを確認し,小中学校に保管された遺物の資料化も実施した。さらに,島外に転出した平島出身者の自宅に,漂着船起源の清朝磁器が多数のセットで保管されていることを確認することができたため,新たな成果が加わった(後日の資料化許可をいただいている)。 さらに中之島では平成29年の神社本殿・拝殿改修時に,完形品の宋・明・清代の陶磁器や近世の肥前磁器が多量に廃棄されていたのを確認し,これらを区長の許可を得て一時的に預かり,その資料化も実施した。 以上の調査成果によって,報告書作成予定頁が大幅に超過することとなり,50万円強の基金では調査報告書を刊行することが不可能となった。そのため報告書作成は先送りとし,その費用は,トカラ列島中之島地主神社敷地内(宮水流遺跡)・宝島大池遺跡発掘調査で得られつつも,分析費用が不足していたために断念していた弥生時代の炭化物(種子を含む)や,宝島大池遺跡発掘調査で得られた動物遺体(イノシシ・ウミガメ・魚類・貝類)および炭化物26点分の自然科学分析費(放射性炭素年代測定分析,炭素・窒素安定同位体分析)として当てることとした。
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