研究課題/領域番号 |
15K02993
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
西江 清高 南山大学, 人文学部, 教授 (10319288)
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研究分担者 |
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 考古学 / 古代文明 / 国家形成 / GIS |
研究実績の概要 |
中国初期王朝時代の政治的空間の構成について、平成29年度は次の3点に集中して研究を進めた。 ①中国現地の調査(山東省、陝西省、四川省、河北省、広東省等の現地調査と学術交流:本年度研究代表者は所属大学の研究休暇をえて、あわせて約2か月間の現地調査を行った。7月初旬から8月中旬まで北京に滞在し、その間、7月初旬に山東省(西部)、中旬に陝西省(関中平原)、下旬から8月上旬に四川省(成都平原と川中川東)、8月中旬に河北省(中部)を踏査した。また2018年1月には香港および広東省(珠江デルタ地域)の踏査と学術交流をおこなった。北京大学の徐天進教授、孫華教授、山東大学の路国権講師、香港中文大学の鄧聰教授らの協力をえて順調に目的を果たすことができた。調査の内容は地理考古学的なもので、初期王朝時代および新石器時代の遺跡の周辺環境と各地域の地形的特徴に関する観察を主とするものであった。黄河流域では本研究初期からの延長上で中国初期王朝の政治中心地域の地域システムの特徴について検討し、四川省、広東省では、初期王朝の遠隔地周辺部の地理的文化的諸相を検討した。後者は研究対象の拡大にともなうあらたな局面の展開という意義をもつものである。 ②黄河下流域(山東省)に関する遺跡データベース(GIS基盤)の作成:中国から出版されている『中国文物地図集』のデータに基づき、遺跡の位置情報を中心に本年内に約9000箇所余りを入力し、デジタル地図内に格納した。山東省についてなお若干の入力データの残余があり次年度に継続する予定である。なお、このデータに関連して、山東大学の路国権講師と研究代表者の間で連絡を取りあい、研究論文の準備をはじめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①現地調査についてはおおむね順調にすすめてきた。2017年度においては研究代表者が所属大学より研究休暇をえたこともあり、合計約2か月間の現地調査を行うことができた。 ②黄河流域遺跡データベースの作成についても、概ね順調に進められている。2016年度にひきつづき、2017年度も中国山東省に注力してデータベースの作成をおこなってきた。ただこの過程で、データ量が当初予想よりかなり多くなることが判明し、約8000項目を入力し終えた現段階(2017年度末)でも、さらに1000項目程度の残余が見込まれている。これについては2018年度前半中には完了する予定である。 ③本研究の当初のおもな目標は黄河中流域を中心とした中国初期王朝の「畿内的地域」を主とした調査と研究であった。しかし、本研究の進展のなかで、初期王朝政治圏の遠隔地である広大な「外域」が注目されてきた。黄河流域の「中央」王朝が遠隔地の諸地域とどのように関わりあったのかという問題意識による。この新たな展望に対応するためにも、当初の予定を超えた広い地域を対象とした検討を要する状況となっている。 ④上記③に関連して、研究代表者と分担研究者は、2017年度のうちに、「中央」の王朝にとっての「遠隔地」に相当する中国長江上流域の四川省、および華南地区の香港、広東省方面(珠江デルタ地域)について、該当する現地の専門家と連絡を取り、初期的な現地調査をおこなった。また現地研究機関との間で具体性のある学術交流をおこなった。このような研究対象の拡張は研究の進展から生まれたものである。ただし研究の後半段階にいたった現時点では、まずは黄河流域に関しての成果をまとめられるように努力したい。
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今後の研究の推進方策 |
①研究対象地域の中心となる黄河流域に関しては、継続してGIS基盤の遺跡データベースを作成し、とくに下流域にあたる山東省方面については2018年度中に完了させたい。 ②山東省方面に関しては山東大学の専門家の協力がえられる状況にあり、2017年度末以降、研究代表者と研究協力者との共著論文を作成中である。2018年度中には公刊したい。この論文には、上記①のGISデータベースにもとづく初期的な解析結果も加えていく予定である。 ③黄河中流域の陝西省関中平原は、西周王朝の揺籃地であり、研究代表者が本研究以前から長く関わってきた地域であり、2017年度までにほぼ現地調査およびGIS解析の初歩的な一段階を終了している。これをうけて、西周王朝の形成過程をテーマとした研究代表者の学術書を、2018年度中に刊行する予定で2017年度中に準備を開始した。 ④「現在までの進捗状況」でも述べたように、本研究の進行にともなって、これまでの黄河流域中心の調査研究にくわえて、初期王朝の「外域」(「外域」は研究代表者が提唱する概念)に相当する初期王朝の遠隔地に相当する諸地域、とくに中国大陸南部の諸地域に注目する必要性がでてきた。本研究計画の残り年度は少ないが、2018年度から最終年度の2019年度にかけて、可能な範囲で四川、雲南、華南などの諸地域にも分析の手を伸ばしておきたい。この新たな展開は、本研究を最終的にまとめるために必要であるだけでなく、本研究以降の研究代表者等の次なる研究段階への第一歩としても重要な意義をもつ。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベース入力作業協力者の作業可能時間に当初予定からの変更が生じたため、作業時間数が減少したことが原因。2018年度においては、この部分を含めてデータベースの作成の時間数を多めにとり、作業に注力していく予定。
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