研究課題/領域番号 |
15K02994
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
高橋 克壽 花園大学, 文学部, 教授 (50226825)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 若狭地域 / 円墳 / 大和政権 / 埴輪 / 物理探査 |
研究実績の概要 |
本研究課題の遂行初年度にあたる平成27年度は、若狭地域最大規模100mの全長を誇る上ノ塚古墳が築かれたときの、階層的に下に位置づけられる古墳の実態を調査することことにしていた。 そこで発掘調査対象として選んだのが三方にある藤井岡古墳である。測量調査が済んでいたため、それに基づいて、墳丘に計3か所の調査区を設けた。それにより、葺石と埴輪を有する遺存状況のよい円墳の各情報を得ることができた。とくに、円筒埴輪がその製作技法において、内面を削り胴膨らみな形態になるものが多く、上ノ塚古墳の埴輪との差が確認できた。いっぽうで、墳丘裾から出土した甲冑形埴輪は若狭地方を含んで北陸地方でもきわめてまれな精巧品で、大和政権の工人の関与が読み取れる。 埋葬施設については、その上面にあったであろう形象埴輪に注意しながら十字トレンチを入れるだけにとどめ、埴輪と埋葬施設の遺存状況を確認するにとどめた。その結果、墳頂の形象埴輪は確認されなかったが、同時に埋葬施設は盗掘などをうけていないと判断できた。掘り下げが足らず、埋葬施設の種類については手掛かりは得られなかったが、横穴式石室とはならないようであった。 この調査に先立って、奈良文化財研究所の協力を得て、掘削前にレーダーと電気と電磁誘導をそれぞれ用いた物理探査を実施した。今後はそのデータとの照合が課題である。また、後の調査にそなえて脇袋丸山塚古墳の前方部特殊遺構へも実施したが、さらに別の手法による物理探査も追加で試みる必要があることを研究所のスタッフと確認した。 発掘調査の出土品は、花園大学考古学研究室に持ち帰り、洗浄などの基礎的な処理を済ませ、甲冑形埴輪をはじめ、いくつか埴輪を復元し、図化を進めた。調査記録は図面からデジタル図面を作成し、写真についても整理した。なお、同時にする予定だった、上ノ塚古墳、そして藤井岡三昧古墳の調査は次年度以後に持ち越した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核となる発掘調査は、研究協力者として学生に支援してもらっている。彼らの中には調査経験が未熟なものが多く、作業に慣れて迅速にこなせるようになるまでかなりの時間を要した。そのため、藤井岡古墳の発掘調査に限れば次年度以後にやり残したものはないが、余力があれば進めたいと考えていた上ノ塚古墳の埴輪との比較や、藤井岡三昧古墳の測量などは、28年度以後に持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
長年待望されてきた、上ノ塚古墳を中心とする脇袋の上ノ塚古墳、西塚古墳、糠塚古墳などの史跡指定とその整備事業の計画づくりが、ちょうど27年度末から若狭町で始まった。申請者もその作業に有識者委員として同席している。よって、本研究はそれとの調整により、有効な調査ができる可能性が高まった。今後は、その進捗状況をにらみつつ研究を推進することが要求される。 いっぽう、28年度は計画どおり、藤井岡古墳の近くにある藤井岡三昧古墳の測量及び発掘調査を予定どうり行う。現在、墳頂には家形埴輪の基部が残っており、本古墳は墳頂の形象埴輪配置の重要なデータを提供してくれる可能性がある。その下の埋葬施設や墳丘斜面の外表施設などは限定的に調査するにとどめ、墳頂部の精査を行う。すでに採集されている家形埴輪の破片はきわめてよい作りをしており、大和政権の工人の関与を推測することできる良好な家形埴輪が発掘で出土すると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は前年度、あるいは、2年後に比べると、予定している調査費用はかなり少ない。しかし、前年度におこなえなかった藤井岡三昧古墳の測量を今年度に行うことにしたため、わずかであるが繰り越してえ予算の状況を図った。
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次年度使用額の使用計画 |
若狭町藤井岡三昧古墳の測量調査を遂行してくれる研究協力者への謝金の一部にあてる。
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