研究課題/領域番号 |
15K02996
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
古谷 毅 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部考古室, 主任研究員 (40238697)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 古墳時代 / 古代東アジア / 葬送儀礼 / 武装具 / 形象埴輪 / 装飾性 / 伝統性 |
研究実績の概要 |
古墳時代は、前方後円墳を中心として執行された葬送儀礼に武器・武具・馬具(以下、武装具)が大きな比重を占めた時代で、古墳文化は日本古代国家形成期における社会の安定と成長に重要な役割を果たしたとみられる。一方、日本列島の武装具は古代北東アジア諸地域の影響下に成立し、刀剣の卓越性や甲冑・馬具の独自性などに著しい特色がある。 本研究は古墳出土の副葬品や形象埴輪を中心に、武装具形埴輪や古代武装具と古代東アジア諸地域相互における武装具との比較・検討から、古墳時代武装具の古代東アジアにおける特性と政治史・文化史的意義を検討し、原始・古代武装具研究の総合化と日本列島における歴史的意義を解明するための研究基盤を確立することを目的とする。 これまでの研究(基盤研究C:課題番号12610422・基盤研究B:課題番号17320127・基盤研究C:課題番号23520943)で把握した日本列島各地の主要古墳出土形象埴輪のうち、出土状況が明確な資料を分析対象として選択した。3年目の平成29年度は九州・近畿地方出土埴輪群を重点的に分析し、併せて中国・韓国を含めた武装具資料を対象として調査を実施した。調査地は福岡県嘉麻市教育委員会・大阪府高槻市立今城塚古代歴史館・京都府与謝野町教育委員会、および中国社会科学院考古研究所・陝西省歴史博物館・陝西省考古研究所(北京市・西安市)、韓国慶北大學校博物館・大邱国立博物館(大邱市)・国立慶州立慶州博物館(慶州市)等である。 また、各調査時に随時研究会・会議を開催したほか、平成30年3月24日に慶北大學校博物館で第3回公開合同研究会を開催し、これまでの研究成果および韓国調査成果を公開した。なお、全発表で韓国人考古学研究者をコメンテーターに委嘱し、具体的な所見報告を基に相互に意見交換を行うと共に、本研究課題に関する韓国(朝鮮)考古学の研究状況についても助言を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、遅れが生じた平成28年度計画の挽回・回復を図るために、6月に再検討した平成29年度研究計画を提出した。また、研究計画・研究対象および研究成果等を研究参加者間で把握し共有するため、各調査時(平成29年度は5回:21日間)に各所蔵機関および東京国立博物館において研究会(同 4回:4日間)を実施して、研究計画の検討と調査結果等の報告を行い、研究成果の共有化を図った。 しかし、7月末の内示で9月から現所属機関(京都国立博物館)に異動となり、旧所属機関(東京国立博物館)から研究資料の梱包・搬出を行った。これに伴って、研究実施場所が分散(京都国立博物館・国学院大学博物館)したほか、旧所属機関から現所属機関へ送付予定資料および書類等が29年度内に受領できず、資料・データ分析・決算等の作業が大幅に遅れてしまった。また、平成29年度下半期に計画した東京国立博物館所蔵資料の整理も再開できなかった。 そこで、再度研究計画の改善と見直しを図る必要があるため、平成30年度2月に補助事業期間延長承認申請を行い、同3月に認可された。このような経緯で、大変遺憾ながら平成29年度研究計画は十分に達成したとはいえない状況であったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、調査計画と研究環境の改善・確保できるように研究計画を立案すると共に、平成29年度自己点検評価を上廻ることを目標に研究の効率性・適時性をより高める。これにより、本研究の目的に挙げた研究成果を確保できるように研究を実施し、調査・研究精度の向上と研究の発展性・独創性および公開性の確立と拡充を図る。 一方、平成27~29年度に実施した韓国における国際共同研究の成果公開として、平成30年3月に総括的な国際研究集会(前述:5.研究実績の概要)を開催したが、この過程で醸成された相互研究交流の推進体制について、今後維持・発展を図ることは大変意義深いと考えられ、将来的な研究計画に反映させることができるように研究環境の整備を推進する。 以上のように平成30年度は、本研究の最終年度として平成28・29年度計画の遅れを回復し、既存の調査資料の整理・分析と研究成果の取りまとめを行うと共に、当初の目的である日本列島における原始・古代武装具研究の総合化と、古代東アジアにおける歴史的意義を解明するための基礎的な研究基盤を確立することを目指す。また、将来のデータ公開に向けて必要な準備を進めると共に、上記の韓国における当該課題についての国際共同研究の準備・交流を強化することも目標において本研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述(7.現在までの進捗状況)の通り、6月の平成28年度繰越未執行分を挽回・回復を目指した研究計画の提出を経て8月まではおおむね順調であった。しかし、9月の所属機関異動に伴う諸移転等により、すでに計画されていた10月の資料調査・研究会を除いて、約4ヶ月間研究が断続的に中断した。その後、11月後半から研究を再開したが、主に旅費・人件費について使用計画額を下回った。そこで、12月以降は当初研究計画のうち、研究協力者や研究協力機関の尽力で再開可能な環境が確保されていた写真等既存資料の整理と韓国調査成果報告会(3月24日)の開催、および同報告会に伴う資料集の作成に予算を執行し、併せて平成29年度研究計画の遂行を進めたが、十分に果たせず次年度使用額が生じた。 補助事業期間延長承認申請が認められた平成30年度は、主要資料の補足調査を実施すると共に、既存調査資料の分析と研究成果の取りまとめ、および将来のデータ公開の準備作業に予算を執行する計画である。
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