研究課題/領域番号 |
15K02998
|
研究機関 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
|
研究分担者 |
小村 眞理 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10261215)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 甲冑 / 小札甲 / 人形 / 武具 / 組紐 / 革紐 |
研究実績の概要 |
研究内容 東アジア出土の甲冑(小札甲)で、日本列島での古墳時代から平安初期の大鎧の成立までの時期を対象に(1)東アジアにおける甲冑を装具が一括で出土し、内容がある程度判明している基準資料を再検討し、その資料を基に比較検討して再整理していく。特に、①裲襠式が古墳時代から存在したのか、②綿襖甲が本当に存在したのか、③鉄革併用甲がどの位存在していたのかの3点を重点的に解明する。(2)日本列島での律令期の鉄甲から革甲への変化による堅固性の評価を復元模造品による比較実験をして検証する。最後に(3)祓いや片付けのための祭祀具や鉄製人形としての小札や甲冑部品の調査を行う。甲冑の埋納形態の再調査をして、半島や大陸との比較検討を行うことで、単なる戦闘用の武具としての機能だけでなく、日本列島や東アジアでの甲冑の持つ存在意義の変遷やその祭祀利用の実態にまで迫る。 研究成果 今年度は(1)では韓国の金海博物館での甲冑展の展示品の調査を行い、鉄革併用甲の新資料を複数発見し、大きな成果を得た。国内では諏訪市小丸山古墳出土品(6世紀)の調査を行い、飛鳥寺出土品との共通性が見いだせ、次年度本格的な全容解明を行う予定である。 (2)堅固性の実験では連結材である革紐と組紐の強度試験を行った。その結果、連結材として、組紐が革紐より強度的に優れていることがわかった。また、同じ革紐でも漆を塗布することで硬さは増すが、引張強度は低下するということもあらたに判明した。 (3)東北・北海道での古代から中世にかけての事例の調査を行った。特に、北海道南部・東部の太平洋沿岸河川流域に多いことや、宮古市田鎖車堂前遺跡の導水施設(12c)から直角に曲げられた平札が出土し、下馬周辺遺跡との共通性が注目された。特に、鎌倉以降小札だけでなく、武具の部品を埋納する武具祭祀に変化することが新たに判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東アジア出土の小札甲では韓国の甲冑の事例を一か所で調査できたことは大きな成果であった。ただ、古墳時代後期の一括資料である藤ノ木古墳出土品や、裲襠式の指標とされている椒浜古墳出土品の調査が申請しているが進展しないため、次年度以降に期待したい。また、堅固性の比較実験は当初の予定を前倒しして連結材の強度試験を行い成果をあげている。小札の祭祀具としての利用だけでなく、他の武具の部品も祭祀具として使用されるようになることが判明して、研究に新たな進展があった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度では韓国での調査以外に、中国での調査も予定しており、海外旅費に大きく割く予定である。また、東北の秋田城出土品や北海道のユカンボシ遺跡出土品以外にも、沖縄の平屋敷古島遺跡で革小札が出土していることが報告書の情報収集でわかってきており、綿襖甲の実態解明の糸口になる可能性が見えてきた。また、グスクやその周辺遺跡で小札や武具の部品が出土していることもわかってきており、武具埋納祭祀の展開の解明のために、国内旅費にも研究費を大きく割く予定である。また、復元模造で漆付革小札を製作して、堅固性の試験を行う予定にしており、模造品製作費や実験用機材、記録用カメラ・ビデオ機器の物品を購入する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費として購入予定であったマイクロスコープと現場携帯用ノートPCの購入をウィンドウズ10対応のおくれのため見送った。その他経費として研究分担者が行う予定であった実験用漆付小札の復元品製作を次年度に送って、連結材の強度試験を前倒ししたために次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度はマイクロスコープと現場携帯用ノートPCの購入を行い、実験用漆付小札の復元品製作を行い使用していく予定である。
|