平成28年度は (1)東アジア出土甲冑の比較研究による再整理では①の裲襠式が存在したかについては椒浜古墳出土品の調査を東京国立博物館に再度依頼したが、資料の状態が悪いとの理由で再度断られた。現存するこの型式の資料はこの一点のみであり、本研究期間内では調査ができず、結論は次の機会に先送りとなった。(2)は前年度までに完了 (3)祭祀具としての小札の調査、甲冑の埋納形態の再調査と生産遺跡の実態解明については、大枠は前年度でほぼ完了した。その中で新たに茨城県城里町の仲郷遺跡第35号土坑出土甲冑小札等の古代東国での事例調査を行い、類例の追加を行った。飛鳥寺塔芯礎跡から出土した小札甲の再調査を行い、当時の最上級のこの小札甲の類例を確認した。また塔芯礎の鎮壇の目的で埋納されたことや、鬼門の方向に置かれていたことを明らかにして、新解釈を発表した(講演2回) 鎮め物として武器・武具以外で鍬先が古墳時代から使用され、それが冑の鍬形に利用され、その鍬形が鎮め物として古代・中世以降も使用されるが、鍬先単体も同様に使用されていたことが、古代の伯耆国庁跡からは鉄製鍬先が5点束ねて見つかったことや、京都大学構内遺跡での住居址出土例など、鎮め物としての小札や武具祭祀との関連性も含めて必要なことが次の課題として判明した。また、古銭も同様であり、沖縄の勝連城跡で武器・武具片とともに、発見したローマコイン数点とオスマンコイン1点についてX線CT調査を進め、不明であったコインのうち数点がやはりローマコインであることを確認し、その来歴や廃棄の理由についても他の古銭と同様に次の課題として残った。
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