古墳出土の釘とそれに付着した材の観察は、釘付式木棺を復元する上で欠くことのできない作業である。本研究計画は、簡易なデジタルマイクロスコープを用いた材組織の観察を行うことで、従来の肉眼観察では明らかにすることができなかった、釘との関係性を重視した材の軸方向や放射方向、年輪界のあり方など、釘の使用部位や棺材の木取り等を検討するための基礎的資料の収集を行い、釘付式木棺のより具体的な用材利用法の解明と棺構造の復元を通じて、釘付式木棺の出現と展開を古墳時代木棺の総体的な展開過程の中に位置づけることを目的とする。また、金属部品を使用したその他の木製品についても、遺存する金属部品の観察から全体の復元につなげていくような応用の可能性についても積極的に検証する。 最終年度である本年度は、主として文献収集による古墳出土釘の発掘調査データの収集、デジタルマイクロスコープを用いた出土釘及び関連資料の詳細な観察に基づく調書作成等を継続して実施した。保管機関における作業は計5機関においてのべ実施し、鉄釘そのもの、および付着した木質の詳細な観察とともに、調書の作成、画像データ等の収集を行うとともに、研究方法の応用の可能性として、木櫃の復元につながる資料収集も実施した。 3年間にわたる一連の作業の結果、釘付式木棺の用材利用法および棺構造復元のための方法論を深化させるとともに、その具体的作業として関東地方を中心とした地域の釘付式木棺の棺構造について整理を加え、古墳時代木棺の総体的な展開過程の中に位置づけた。さらに木棺以外の金属部品を使用した木製品への方法的応用として、奈良時代の木櫃の復元案を示すことができた。これらの成果については研究成果報告書をとして取りまとめ、公表した。
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