研究課題/領域番号 |
15K03000
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
今井 晃樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60359445)
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研究分担者 |
神野 恵 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60332194)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 施釉 / 瓦磚 / 陶器 / 西大寺 / 平城京 / 奈良三彩 / 唐招提寺 / 左京二条二坊 |
研究実績の概要 |
平成29年度は当初の計画にもどづき平城京出土の施釉陶器、瓦磚について考古学的観察や分析を実施した。西大寺出土の施釉陶器の実測図作成、整理研究をおこない、正倉院御物、その他の遺跡で出土した奈良三彩および同時期の土師器、須恵器との比較をおこない、施釉陶器の編年研究を実施した。これによって、従来、不明確であった施釉陶器の奈良三彩の時期について、確度の高い年代観を提示することができた(神野恵)。 施釉瓦磚については平城京内で施釉瓦磚が集中して多量に出土した平城京二条二坊の施釉瓦磚の考古学的分析をおこなった。出土分布図を作成し、坪ごとに出土した施釉瓦磚の種類、紋様、釉薬の色調、胎土がことなることを明らかにした。その結果、同地区には紋様と胎土がことなる施釉瓦磚がすくなくとも2種類あることが判明し、一方は、平城宮内や東大寺前身寺院出土の施釉瓦磚と共通することから、その生産の時期や工房、契機については、東大寺、平城宮と密接に関連することが予測された。また施釉瓦磚の年代についても検討した、遺構の時代や他遺跡出土の施釉瓦磚との比較から、奈良時代中期であることを明らかにした(今井晃樹)。施釉瓦磚および施釉陶器の自然科学分析についても昨年度につづき実施した(降幡順子)。 以上を踏まえ、2017年10月21日に奈良文化財研究所において研究会を開催した。当日の報告は以下の通り。 今井晃樹(奈良文化財研究所)「平城京左京二条二坊の施釉瓦」、神野 恵(奈良文化財研究所)「西大寺食堂院井戸SE950出土の奈良三彩陶器の再整理」、岡田雅彦(奈良県教育委員会)「唐招提寺出土の施釉瓦」、降幡順子(京都国立博物館)「平城京寺院出土の施釉陶器瓦磚の分析」 研究会では多くの専門家の参加を得、施釉陶器や瓦磚を実見ながら各種の問題について議論をした。昨年度に引き続き、関西地方の施釉陶器、瓦磚のデータベースを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までに平城宮出土の施釉瓦磚と施釉陶器の考古学的な分析研究、平城京出土の施釉瓦磚と施釉陶器の考古学的な分析研究、平城宮および平城京出土の施釉瓦磚および施釉瓦磚についての釉薬および胎土の自然科学的分析を実施した。以上の成果をもとに2017年度に中間成果の報告として、以下のような研究会を実施し、成果のまとめと公表を実施した。以上を踏まえ、2017年10月21日に奈良文化財研究所において研究会を開催した。当日の報告は以下の通り。今井晃樹(奈良文化財研究所)「平城京左京二条二坊の施釉瓦」、 神野 恵(奈良文化財研究所)「西大寺食堂院井戸SE950出土の奈良三彩陶器の再整理」、岡田雅彦(奈良県教育委員会)「唐招提寺出土の施釉瓦」、降幡順子(京都国立博物館)「平城京寺院出土の施釉陶器瓦磚の分析」 施釉瓦磚・施釉陶器のデータベース作成は、畿内の奈良、京都、大阪はほぼ終了した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、平城京の寺院、具体的には東大寺(正倉院宝物も含む)、興福寺、薬師寺、大安寺、法華寺、西大寺、西隆寺、唐招提寺などを中心に、近隣の井出寺や樋口遺跡等の出土品を対象に、施釉瓦磚および施釉陶器の考古学分析を実施する。また、施釉瓦磚および施釉陶器を生産した窯跡の資料とも比較し、施釉製品の生産と流通についての検討を加える予定である。 施釉瓦磚および施釉陶器の自然科学的分析についても継続し、新資料を追加して、平城宮・京、寺院出土の資料について、共通性と差異をあきらかにし、施釉製品の生産と流通についての課題を解明する。 また、データベースについては今年度も継続し、日本全国のデータベース作成を完成させることとする。 以上の成果を最終年度である、今年度に冊子にして公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までに十分な研究検討ができなかったために、次年度に繰り越した。本年度の具体的な研究内容は以下のとおりである。 平城京の南都七大寺をはじめとする官寺出土の施釉陶器、施釉瓦磚の考古学的な検討をとおして、施釉製品の生産が、平城宮と官寺、あるいは官寺でも寺院ごとに生産を個別におこなっているのか、一括して官で生産したのち、平城宮あるいは官寺に供給しているのかといった課題を明らかにする。そのために、施釉陶器、施釉瓦磚についてそれぞれ寺院ごとに考古学的な分析をおこない、製作技法、形態、紋様、材料などに各官寺で共通するのか、差異があるのかをあきらかにする。一方で同資料の自然科学的な分析を実施し、科学的な方面から生産が一括なのか個別なのかを検証する。 以上をふまえて昨年度まで実施した、平城宮、平城京における分析結果と寺院の分析結果を比較検討し、奈良時代における施釉陶器、施釉瓦磚の生産と流通の実態を明らかにする予定である。 使用計画は必要な資料調査のための旅費、自然科学分析費、出土データベース作成のための人員の謝金、最終成果を冊子にするための印刷費などを予定している。
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