研究課題/領域番号 |
15K03010
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中村 努 高知大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (00572504)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 僻地医療 / 病院 / 僻地診療所 / 地域医療構想 / 高知県 / 台湾 |
研究実績の概要 |
高知県内の基幹病院を中心として,現在の医療供給体制がいかにして維持されているのか検討する。特に,高知県の僻地医療政策において,医療従事者の確保と在宅医療の推進に向けた多職種間の連携強化の2点に焦点を当てて検討した。高知県の過疎地域では,無医地区が多く,高齢化率が50%を超える自治体もある。県内では,出張診療所を含めた僻地診療所が29カ所設置され,僻地医療拠点病院が8カ所指定されており,僻地診療所への医師派遣や巡回診療といった医療活動が継続的に実施されている。僻地医療の支援態勢として,高知県へき地医療支援機構による代診医師の派遣や情報ネットワークの整備,高知県へき地医療協議会による医師の確保があるが,診療機能の継続および医師確保がきわめて困難な状況にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の先進事例地域である高知県において,フィールド調査を実施したことによって,本研究が目指す理論化に欠かせない基礎的データを収集することができた。また,高知県梼原町において,予備的調査を行うことができた。国外では,台湾において,複数の先進事例地域を選定するにあたって,必要な基礎的データを収集するとともに,留学生を通じて現地の事情に詳しい医師とのコンタクトをとる目途がついた。以上の成果は次年度に向けた詳細なフィールド調査に向けて不可欠な作業過程であり,交付申請書に記載した「研究の目的」をおおむね達成したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査を踏まえて,事例の主体を対象とするヒアリング調査を通じて定性的,定量的データを収集する。自治体や医療法人,社会福祉協議会といった医療・福祉関係団体等関係者による,医療空白地域の解消に向けた行動を明らかにする。被調査者へのヒアリングを実施するため,地域ケア会議をはじめとする研究会や関係組織の交友関係に基づいて被調査者にアクセスする。一連の分析で得られた成果は,医療供給空白地域の解消に向けた取組みにおける行動が展開される要因とメカニズムとして,国内外の学会発表において発信する。東アジアという広域の空間スケールにおいて位置づけるため,具体的には以下の2点を軸とした研究を遂行する。 ①日本の縁辺地域(高知県梼原町)における医療供給空白地域の発生要因の解明と,その解消に向けた医療供給主体の行動に関する分析と展望 ②台湾の縁辺地域における医療供給空白地域の特定と発生要因の解明および事例地域の選定 ①では,前年度の予備調査において把握した各事例を詳細に分析するとともに,医療供給体制において地域差が生じるメカニズムを提示する。そうして得られた研究成果は学会発表に加えて,学術雑誌に投稿する。②では,台湾における先進的事例にかかわる各医療供給主体に対するヒアリングに向けて,既存の統計データとを収集するとともに,医療関係者へのヒアリングを通じた定性的データを収集する。そして今後,本格的な調査を実施するにあたって,適切な事例を選定するための基礎的資料とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
台湾における調査対象地域を選定するための予備調査について,資料収集を丹念に行う一方で,医療供給空白地域を解消するための供給主体間の連携の経緯や取り組みの概要について把握するための現地調査が実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
台湾および日本において医療供給にかかわる各主体へのヒアリング調査のための渡航にかかる費用に充当する。台湾では被調査者へのヒアリングのための通訳謝礼を充当する。また,研究成果の発表にかかる経費について,会場までの交通費や宿泊費,学会参加費を充当する。加えて,統計データや地誌に関する資料・書籍購入費が必要となる。また,アンケート調査を実施する可能性があり,通信費や郵送費を要する予定である。
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