本研究は日本と台湾の縁辺地域における医療供給体制を実証的に明らかにした。地域包括ケアを推進してきた高知県梼原町では,人口減少の進展により,推進員にかかる負担に集落による地域差が生じるとともに,担い手の減少と高齢化によって,NPO法人による要介護高齢者の移送サービスの存続が危惧された。台湾の緑島では,出身医師による長年の献身的な努力がみられた一方,ナショナル・スケールの支援が有効に作用していないケースがみられた。島内では家族の支援や外国人労働力による在宅介護,休業や家族の分断を伴った島外への受療行動が確認できた。以上,多層的ガバナンスのあり方が医療供給体制の地理的多様性を生む要因となっている。
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