本研究は、アメリカ議会図書館および国立公文書館に所蔵される未利用の旧版地形図と空中写真を用いて、大規模な森林減少・サバンナ化が指摘されてきたエチオピア南部における1940年代から現在までの土地被覆・土地利用変化を復原し、具体的な検証が乏しいまま環境劣化が強調されてきたアフリカの環境問題に地理学・環境史の分野からの貢献をしようとするものである。本研究では、地理資料を用いて土地被覆・土地利用変化をGISで分析するとともに、エチオピア南部の広域の現地調査と文献調査をあわせておこなうことによって、民族集団の生業動態・文化規範や国家政策との関連で変化のメカニズムを説明することを目的とした。 本年度は、前年度までに明らかになった、エチオピア南部各地で行われた2000年以降の急速な農園開発にともなう土地被覆変化の実態に関する調査を進めた。その結果、エチオピアで2000年以降に進んだ土地の登記の動きに関連し、高地から低地に政策的におこなわれた移民が、慣習的な土地利用者であった焼畑民に対して、個人的に土地を買収したり、また企業が慣習的土地利用者の許可を得ることなく土地収奪をおこなっていることが明らかになった。これらの動きにともなって、休閑サイクルをともなう焼畑利用地が急速に常畑化し、森林がコーヒー農園などに変わることによって減少していることがわかった。これらの実態はGISデータとして整理しており、論文執筆による公表の準備を進めている。本科研の主な対象であるアメリカ公文書館の地図・空中写真の整理作業もあわせて成果発表の準備を進めている。
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