研究課題/領域番号 |
15K03015
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
渡久地 健 琉球大学, 法文学部, 准教授 (30543764)
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研究分担者 |
長谷川 均 国士舘大学, 文学部, 教授 (80208496)
藤田 喜久 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (20771463)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サンゴ礁地形 / 底生生物 / 礫質環境 / 漁撈活動 / 奄美大島大和村 / 石垣島 |
研究実績の概要 |
漁師らが「カタマ」と呼んでいる礁前面(リーフの外海側)にある凹地において,「地形―底質―生物―漁撈」の関係を明らかにする調査を奄美大島大和村で実施した。その研究成果は,渡久地ほか(2016),渡久地(2017)において報告した。 「カタマ」は,直径数十メートル,比深数メートルで,底にはテーブルサンゴ由来の扁平礫が敷き詰められていている。そこには造礁サンゴや目立った海藻は認められないが,魚が群れ,網漁や釣り漁の漁場として古くから利用されてきた。カタマに魚が群れる理由を,扁平礫の下や裏に棲む小生物に求めることができ,従来にない新し知見を得ることができた。すなわち,ハマフエフキなどの魚類が扁平礫を鼻先で返し,礫裏や礫下の小生物を餌にしていることが明らかになった。礫下や礫裏の生物調査のデータの詳細な分析は次年度に行い,地形―生物―漁撈の関係の内実がより具体的に解明されることが期待できる。 この研究は,礫質環境(いわゆる「ガレ場」)が生物多様性を育むマイクロハビタット(従って重要な漁場)であることを示していて,従来のサンゴや藻場に主眼をおいてきた保全策の再検討を促すものである。同時に,民俗知識が自然科学に対して重要な示唆や新たな発見をもたらした事例でもある。 石垣島(名蔵湾と石西礁湖)では,「地形―底質―魚類―網漁」の関係を明らかにするために,定置網漁とカゴ網漁の参与観察と聞き取り調査を行うととに,漁獲魚種に関する資料(漁協の仕切り書)を入手した。このデータは次年度に分析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
漁場の底生生物調査を中心とする奄美大島に於ける調査はおおむね予定通り進捗したが,伊平屋島などにおける傭船を伴う調査(漁場の地形,生物調査,漁撈活動の参与観察)は,度重なる台風の接近のために中止を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成29年度は,次の調査を実施する。 1)サンゴ礁漁場の地形,生物調査,漁撈活動の参与観察(伊平屋島) 2)サンゴ礁地形の民俗分類の調査(渡名喜島,水納島,伊是名島) 3)サンゴ礁漁場における定置網漁,カゴ網漁の調査(石垣島)
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた傭船を伴う海洋調査が,相次ぐ台風接近によって中止を余儀なくされた。
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次年度使用額の使用計画 |
中止を余儀なくされた調査は,次年度に実施する予定である。
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