研究課題/領域番号 |
15K03019
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
吉田 栄一 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 准教授 (70450517)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国のアフリカ進出 / 途上国地域開発 / 移民の受容 |
研究実績の概要 |
27年度中は、主として文献研究やウェブなどでの公開情報を中心に実施し、特に中国語文献・データの研究を鋭意進めた。 具体的には中国企業や小規模ビジネスのアフリカ進出、対アフリカ移民急増の背景にある中国の対アフリカ外交の変化に関する史資料分析を行った。また経済進出状況、特に貿易投資関係の拡大に関するデータ収集と分析、具体的なアフリカ54か国に対する中国政府系企業、地方省企業、民間企業の直接投資に関するデータ収集分析を行った。この過程で対アフリカ進出の主要対象国をアンゴラ、ザンビア、南アフリカと位置づけ、この三カ国については具体的な直接投資企業の情報収集分析、中ア協力体制下での地域開発の進展状況に関する調査、地域産業開発に関する状況の情報収集、分析を実施した。 アンゴラについては直接投資とならびインパクトが大きいとされている建設請負協力による都市開発事業について資料収集分析をおこない、ザンビアについては象徴的な経済協力事業として挙げられることの多い、チャンビシ銅鉱山地域開発とそれに伴う中国系鉱山企業、精錬企業等による進出状況と都市地域開発の状況を、南アフリカについては大都市部における都市開発直接投資、移民による不動産投資、小規模移民商人の孵化装置となっている中国系モール開発について資料収集と分析を行った。 1年目の研究成果について論文「アフリカの経済発展と中国のアフリカ進出」として、28年度中に朝倉書店刊行『世界地誌シリーズ アフリカ』に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
構造調整期以後のアフリカ経済の変容における、貿易投資の寄与や海外直接投資の動向をおさえつつ、とりわけ最近の新興国であるBRICS、VISTAの世界経済変容に対する寄与を踏まえて、アフリカ経済変容の世界に占める位置と、そこでの対中経済関係の占める部分を明らかにした。 その作業過程において中ア経済関係の中心となっているのは一時的な変化や交代はあるも歴史的政治的に対アンゴラおよび対ザンビア関係であり、また近年はBRICS関係国として双方向の貿易投資関係が拡大してきた南アフリカ関係が前者を凌ぐ規模に拡大してゆるぎないものになっていることを位置付けた。中ア関係は全体的な貿易投資の数字を通して総体として取り上げられることが多いが、実態は一握りの強力な経済関係、外交関係を有する国々を基軸にした関係で形作られており、そのような状況を踏まえると対ザンビア関係と対南アフリカの関係を研究の中心におくことの妥当性が確認できた。現地の地域開発の状況を文献資料およびウェブ上の情報に頼って進めるのは困難な部分もあり、特にザンビアについてはミクロリージョンレベルの状況把握が進んでいない。南アフリカについては開示されている情報や他の研究者によって公開されている情報も増えており、また実際の開発計画に関わっている中国側の研究者による情報発信を踏まえると、現地調査無しでも一定程度の地域開発状況は確認できている。 また調査研究方法として使用するGISデータを作成するための環境整備を行い、基礎的な地図データ作成までは実施した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の現地調査計画と合わせて、28年度中に2回の海外調査を実施することとした。 具体的には昨年度分の繰り越し予算を用いた調査を28年8月に10日間程度実施し、本年度分の予算を用いた調査を12月もしくは2月に3週間程度実施することとする。 中国人調査助手を日本および現地調査国において使い、現地進出企業の立地変化を把握し、地理データベース化する。また中国人小規模ビジネスの空間的拡大の状況については現地フィールドデータ収集をザンビア大学地理教室教員および関係者の協力を得て行う計画である。南アフリカ調査についてはステレンボッシュ大学中国研究センターの教員と大学院生の協力を得て実施する計画である。現地調査によって収集するデータを用いて、企業進出状況のビジュアル化と中国系企業や移民ビジネスによる地域選好の状況と背景を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度中(28年2月)に海外調査(南アフリカ)を予定していたが、現地の受け入れ予定機関となる予定のステレンボッシュ大学中国研究センターの当該研究者が2月3月と海外に出て不在となり、同時にヨハネスブルグでのフィールドワークについて十分な遂行能力をもつ調査助手を確保できなかったことから、準備不十分なまま年度末に実施するよりは、28年度早々に確実に成果が出る体制をつくり、28年度の現地調査計画と合わせて、28年度中に2回の海外調査を実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
具体的には昨年度分の繰り越し予算を用いた調査を28年8月に実施し、本年度分の予算を用いた調査を12月もしくは2月に実施することとする。
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