研究課題/領域番号 |
15K03020
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
大場 茂明 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (10185366)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 住宅政策 / 都市居住 / コミュニティ再生 / ジェントリフィケーション / 社会住宅 / ハンブルク |
研究実績の概要 |
国内にて住宅政策をはじめとするドイツ都市政策に関する文献・資料や現地関係機関が公表している公文書類を収集・分析した後、平成28年9月中旬より約二週間にわたってドイツ連邦共和国に滞在し、ハンブルク大都市圏における都心周辺部における住宅地開発事業に関する資料を収集するとともに、ハンブルク州都市開発・住宅庁(BSW;旧都市開発・環境庁を組織改編)や同州アルトナ行政区にて開発事業や住宅政策に携わっている専門家に対するインタビューを行い、当該地域における居住施策の最新動向、新規住宅地開発事業の理念など、研究課題に関する貴重な情報を現地で入手することができた。さらに、事業担当者の案内によりアルトナ行政区内の再開発地域でのインテンシィヴな現地調査を実施し、住宅新規建設事業の実態を見学するとともに、現場で事業の進捗状況、当面する問題点などについて質疑応答を重ねた。 この中には、以前より継続調査中であるインナーシティの事業地区(ザンクト・パウリ地区)のほか、近年地区更新が進んでいる既成市街地縁辺部(アルトナ・アルトシュタット地区、オッテンゼン地区)も含まれており、地区の性格や担い手、事業目的を異にする住宅地開発事業の多様な実態を知ることができた。 あわせて、都市空間構造の再編が進む日独両国におけるコミュニティレベルでの居住政策の位置づけや今後の見通し、さらにはポスト工業化社会における都市政策の国際比較について、現地研究協力者(ホーン教授、シューベルト教授)をはじめ、関心を同じくするボーフム大学地球科学部地理学教室やハンブルク=ハーフェンシティ大学に所属する研究者と討議を行った。 こうした研究成果の一部は、学会発表の後、査読付き学術雑誌『日本都市学会年報』に投稿した(掲載決定済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献・資料や公文書類の収集・分析により、ハンブルク大都市圏における都市居住施策の最新動向を把握することができた。また、こうした施策がコミュニティレベルの住宅市場や住民構成に及ぼす影響についても、一部の調査対象地区においてはハンブルク州アルトナ行政区政策担当者へのインタビューによって詳細に把握することができた。 また、これまでの現地調査を通じて知己を得た現地都市更新事業組織(steg)関係者の紹介により、ハンブルク州都市開発・住宅庁や同州アルトナ行政区にて事業に携わっている専門家へのインタビューを実施し、研究課題に関する貴重な情報を現地で入手した。これらの情報や収集資料は、学会発表や論文執筆において活用することができた。 他方、当初予定していた連邦レベルでの住宅政策の動向については、担当者との調整が付かなかったために関係機関(ドイツ連邦政府建設・空間整備局BBRほか)への訪問を実施できなかったものもあったが、インターネット等を通じて入手できた行政資料をもとに分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の分析対象となる居住施策には、「社会維持条例」や「家賃ブレーキ制度」など、ここ数年新たに施行されたものも含まれており、それらが地区の住宅市場や住民構成に及ぼす影響を如何に評価するかが、解明すべき重要なテーマとなっている。これに関しては、現地研究協力者とも密接に連絡を取りながら、引き続き最新情報をフォローしていく予定である。 あわせて、第二年次までに実施できなかった調査対象地区における更新事業担当者へのヒアリングを引き続き行うとともに、地区再開発協議会や住宅公益企業など、関係団体・住民組織に対するインタビューを実施する。こうした現地調査を通じて、大都市圏内におけるコミュニティレベルでの居住政策とその影響に関する地区間比較分析をさらに深めていく。 また、地区更新事業に関係する諸機関のうち、第二年次までに訪問できなかったものに対しては、次年度に改めてインタビュー調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査時に複数箇所で行った事業担当者へのインタビュー内容を業者に依頼してテープ起こしする予定で予算を確保していたところ、使用言語であるドイツ語担当者の作業日程確保の都合上、一部が年度内に納品出来ない可能性があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、事業担当者へのインタビュー内容のテープ起こしを行う際に使用する。
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